粉骨を業者に依頼するメリット
大切なご遺骨の粉骨はご自分ですることも不可能ではありませんが、粉骨代行業者に依頼する方法もあります。もちろん、業者に支払う費用はかかりますが、費用をかけてまで粉骨業者に依頼するメリットはたしかにあります。
≪目次≫
粉骨代行業者とは
粉骨代行業者とは、ご遺骨をご遺族に代わって粉砕して粉状にすることを請け負う業者です。
粉骨は多くの場合散骨の準備として行うことが多いため、散骨セレモニーを請け負っている葬祭業者などが粉骨の代行を行っていることが多くなっています。また代行散骨を行っているところもあります。葬送の多様化に応じて葬儀屋も多様な葬送に対応するようになっており、粉骨や散骨についても相談にのってくれることが多いでしょう。ただ、粉骨のみを依頼することができる葬儀屋さんはあまり多くはありません。また、粉骨に対応していないところもあり、引き受けても現実には下請け(葬儀屋さんから他の粉骨業者に依頼する)に出す場合もあるようです。
散骨セレモニーを中心に事業を行っている業者(従来型の葬儀は扱わず、海洋散骨等だけに特化している業者)では、ほとんどの場合粉骨代行にも対応しています。この場合は、海洋散骨のプランの中に粉骨代行費用も含まれていることが多くなっています。
一方、粉骨を中心に事業を行っている業者もあります。このような業者は葬儀セレモニーなどは行わず、行ったとしても散骨代行(ご遺族の立会なしに業者が散骨をする)のみを扱うことが多くなっています。
一概には言えませんが、依頼する費用は、葬祭業者が一番高く、次いで散骨セレモニー業者、粉骨専業業者という傾向にあります。粉骨サービスの質の高さは費用の高さに比例するわけではないことには注意が必要です。
粉骨代行業者に依頼するメリット
ご遺骨の粉骨はご自分で行うことも不可能ではありません(参照: 粉骨の方法(散骨準備・焼骨のかさを減らして自宅供養する )が、肉体的にも心理的にも負担のある作業です。だからこそ粉骨代行業者の存在価値があるともいえますが、改めてご自身で粉骨をせず粉骨代行業者に依頼することのメリットを見ていきましょう。
負担を減らせる
ご自身で粉骨をする場合には、いくつかの負担を覚悟しなければなりません。
考えうる負担としては下記のようなものがあります。
- 遺族として故人の焼骨を粉砕する行為に心理的抵抗を感じる。
- 粉骨するための機材をある程度揃えなければならない。
- 遺骨を粉砕するのに意外と力が必要。
- 粉砕過程で遺骨が飛び散ってしまう。
- 細かい遺骨の粉を吸い込んでしまう。
- 他人の目に触れない場所で作業する必要がある。
これらをどの程度負担に感じるかは個人差がありますが、実際に手作業で粉骨を行ってみると想像した以上に大変であることがわかります。
焼骨は少しつまんだだけで粉になってしまうぐらいもろくなっている部分もありますが、なかなか細かくならないような硬い部分もあります。また、骨壺の中にはすでに粉になっているご遺骨も含まれていますが、その一部は他の容器に移そうとするだけで煙のように空中に漂ってしまいます。また、ご遺骨を粉砕する様子を事情の知らない他人が見ることは避けなければなりません。
何よりも大きいのは、ご遺骨を粉砕するという行為がご遺族にとっては辛い場合があるということです。
これらを承知の上で、ご自身の手で粉骨することが供養になると考えて行うこともあるでしょうし、それはそれで良いことだと思います。しかし、これらの負担が気になるようであれば、粉骨代行業者に依頼するのが良いでしょう。
きれいに粉骨できる
ご自身で手作業粉骨する場合でも、かなりきれいな粉にすることは不可能ではありません。しかし、一般に粉骨作業に慣れている方はいませんから、そこまでにするには多大な労力と時間がかかります。がんばってもどうしても一部はきれいな粉にならないという場合もあります。
機械粉骨できれいなパウダー状に
これに対して、粉骨代行業者に依頼すれば、ご遺骨はきれいなパウダー状になります 1。
粉骨代行業者の行う粉骨は、機械による粉砕を行い、粒子の非常に細かいパウダー状にすることがほとんどです。機械にもいくつか種類がありますが、機械粉骨であればほとんど仕上がりは変わりません。一方、手作業粉骨を謳っている業者もありますが、手作業でもかなり細かい粉状にしてくれるはずです 2 。
きれいな粉にするには乾燥も重要
もう1つ重要なのはご遺骨の乾燥です。まずお墓に埋葬されていたご遺骨は多量の水分を含んでいるため、そのまま粉砕しようとしてもきれいな粉にはなりません。特に骨壺に入れず直接お墓の土の上に置かれていたようなご遺骨は非常に多くの水分を含んでいることがほとんどです。
また、ご自宅に安置していた焼骨も、ご自宅内の湿気などを取り込んでしまっていることもあります。これは火葬をしてから経過した時間、経過した季節、ご自宅内の環境や安置場所などによって大きく異なります。火葬から半年程度であれば多くの場合十分乾燥していますが、これ以上経過していると湿気を多く含んでいる場合もあります。
したがって、粉砕作業前にご遺骨を十分に乾燥させることが重要になります。
しかし、ご自身でご遺骨を乾燥させるのは容易なことではありません。天日干しによって実現できる乾燥度には限りがあり、また屋外にご遺骨を長時間置くのはご遺骨散逸のリスクを高めます。
粉骨代行業者は、ご遺骨の粉砕を行う前にご遺骨を乾燥させる工程を設けていることがほとんどです。ただし、業者によっては、ご自宅に安置されていたご遺骨の場合は、乾燥工程を経ずに粉骨する場合も多いようです。逆に必ず含水量を計測しているような業者もあります。いずれにしても、きれいなパウダー状になるような乾燥状態でなければ粉砕作業を行わないというのが粉骨業者の基本であろうと思います 。
ちなみに弊社では、ご自宅安置のご遺骨であっても、基本的な乾燥工程を必ず設けています(標準乾燥)。お墓の中に埋葬されていたご遺骨については、標準乾燥だけでは足りないので、長時間の特別乾燥工程(有料オプション)を設けています。
時間がかからない
ご自身で粉骨を行おうとすると、かなりの時間を費やすことになります。粉砕作業自体に慣れるまで時間がかかりますし、きれいな粉にしようとすると粉砕したご遺骨をふるいなどにかけて確認する必要もあります。丸1日かけても終わらず、数日間かけなければならないことも多いでしょう。
しかし、粉骨代行業者であれば短時間で粉骨は完了します。
機械粉骨を行っている業者の中には、ご遺骨お預かりから約1時間で粉骨後のご遺骨を引渡すことを謳っているところもあります。確かに、お預かりするご遺骨のコンディションによってはそれも可能です 3 。機械粉骨を行う場合に粉骨工程で時間がかかるのは粉砕工程ではありません。機械で行う粉砕工程は数分で完了します。
時間がかかるのは他の工程で、業者によってその取扱いは異なりますが、ほとんどの粉骨代行業者ではかなり早く粉骨は完了するはずです。
(たとえば弊社では火葬後間もないご遺骨も標準乾燥を行っています。また六価クロム無害化処理を行った場合は液剤でご遺骨が濡れますのでその分乾燥時間が長時間となります。これらを省略すれば一部の業者さんが行っているいわゆる「スピード仕上げ」も可能ですが、弊社ではこの工程を省きませんので即日作業完了とはいかないのが現実です。)
必要な処理を行ってもらえる
たとえば、機械粉骨を行っているからといって、お預かりしたご遺骨をただ機械に投入してスイッチを入れるというのが粉骨作業ではありません 4。粉骨作業にはさまざまな他の工程があります。
ご遺骨を十分に乾燥させる
先に述べたように、きれいなパウダー状にするため、また長期保管を可能にするために、ご遺骨を十分乾燥させる工程があります。
異物を取り出してくれる
また、骨壺の内容物にはご遺骨以外にもさまざまな異物が混入していることが多いものです。多いのは棺に使われていた釘やタッカー針などですが、他にも医療用ステントや歯科治療に使われたセラミック、埋葬されていたご遺骨の場合は周囲の石などです。多くの代行業者はこれらの異物を事前に取り除いでから粉砕工程に入ります。
六価クロムの無害化処理
さらに、ご遺骨には六価クロムという有害物質が含まれていることもあり、これを無害化処理してくれる業者もあります。六価クロムは、高温下で火葬場のステンレス架台とご遺骨が触れていることによって含有するに至るものです。ご遺骨のすべてに含まれているとは限りませんが、ご遺骨に触れるご遺族や、粉骨作業者の健康、散骨をする場合の自然環境などに配慮するなら対応の必要なものであることは間違いありません(ただし、六価クロムは常温では気化しないので、骨壺に入ったご遺骨をご自宅に安置していてもご心配は必要ありません)。
六価クロムは絶対に含まれているとは限りませんが、検査によって検出された場合には処理を行うべきものです。弊社でも、標準工程として、検査試薬による六価クロム検出検査を必ず行い、環境基準値(0.05mg/L)以上が確認された場合には還元液剤による無害化処理を行っています 5 。
ただし、このような工程を行っていない業者もあり、またこの工程はオプションとして別途費用が必要になる業者もあります。
遺骨に含まれる六価クロムについて法的な規制があるわけではありませんが、散骨を行う場合には環境汚染をしないように気をつけたいと考える方も多いでしょうから、きちんと対応してくれるかどうか確認して業者を選択するのが良いでしょう。
殺菌など
ご遺骨の保管状態によっては、カビなどが発生していることがあります。それに伴い臭いが発生してしまっているようなこともあります。弊社ではこのような場合、該当箇所をバーナーによって高温燃焼処理を行ってから乾燥工程に入ります。そのまま乾燥させるとカビの胞子が広がってしまいますし、洗浄しようとしてもかえってカビなどの範囲を拡げることにつながりかねないからです。燃焼処理をした上で十分に乾燥させれば臭いは消失します。
また、弊社では粉骨後のご遺骨を封入前にUVステリライザーによって紫外線消毒しています。これは保管時の変質を防ぐために行っているものです。
これらの工程も業者によって取扱いは異なりますので、事前に作業内容を確認しておくことが望ましいでしょう。
長期保管しやすくなる
粉骨後のご遺骨は、多くの業者が真空パックでお手元に戻すようにしているようです。粉末になったご遺骨は飛散しやすいので完全に封入されている必要がありますし、変質を防ぐ意味でも真空パックが望ましいことは確かです。真空パックの材質は業者によって異なり、中身の見えるビニール製か、強度のあるアルミ製かといったところです 4。
また、適切に処理を行ってから粉砕を行っていれば、真空パック内で長期保管可能です。
ご自分にあった粉骨代行業者を選びましょう
ご自身で粉骨を行うことの難しさやご苦労を考えると、粉骨は代行業者に依頼する方が良いと思います。
粉骨代行業者を選ぶ際には、業者に依頼することのメリットを考え、そのメリットを十分実現してくれる業者なのかどうかを調べることが大切です。ひとことで「粉骨」といっても単に遺骨を粉砕するだけではなくさまざまな工程があり、その工程の取扱い方は業者によってことなります。ある業者では標準として行われていても他の業者ではまったく行われていない作業工程もあります。また、気になる作業に別途費用がかかってしまうような場合もあります。
また、業者によって費用も大きく異なります。相場的には3万円前後といったところですが、業者によって価格にかなり幅があります(弊社では7寸までの骨壺の場合1柱1万5千円)。ただ、基本料金の中にどのような工程が含まれているのか、なにが別途費用となるのかを確認し、その上で比較して選択するようにしましょう。郵送でのやりとりが発生する場合には、送料の取扱いや梱包資材の負担などについてもよく確認することが大切です 6。
何よりも大切なご遺骨を一時的にでも預けるのですから、信頼できる業者かどうかというのが最も大切なポイントです。これについては、心配なことなどを事前にメールなどで相談してみて対応を確認してみるのも良いでしょう。
- 仕上がりについては業者によって異なりますが、「きれいなパウダー状にします」と謳っている業者がほとんどです。 ↩
- 弊社は手作業粉骨を行っていないので、見聞したところによるとということです。 ↩
- 弊社ではいわゆる「スピード粉骨」は承っていません。作業ポリシーとして約12時間の標準乾燥工程を設けることとしているからです。また、標準工程である六価クロム検査によって六価クロムが検出された場合には無害化処理工程で液剤を使用するため、ご遺骨乾燥により時間がかかります。したがって、どんなに早くても約1日の作業時間がかかるのです。 ↩
- そのような取り扱いをしている粉骨代行業者がある可能性も否定はできませんが。 ↩ ↩
- 弊社では、粉骨後のご遺骨をお客様に確認していただけるように、中身の見える透明な包装としています。ビニール三層構造(ナイロン+ポリエチレン+抗菌ポリエチレン・耐熱-40℃〜120℃)。 ↩
-
弊社(散骨粉骨代行サービスのINORI)では、お客様からのご遺骨のご郵送、弊社からのご遺骨郵送、ご遺骨をお送りいただくための梱包資材一式等を基本料金内に含め、安価な価格設定で粉骨サービスをご提供しています。また、標準乾燥、六価クロム無害化処理、UV殺菌なども標準工程に含まれており別途費用はかかりません。これらをすべて含んだ価格としては業界最安値レベルだと思います。詳しくは下記をご参照ください。
・ 粉骨サービス内容・料金・ご利用方法
・ ペット粉骨サービス内容・料金・ご利用方法 ↩
誰もが安価に選択できる葬送の方法を模索中です。また法律・条例や社会的ルールが向かうべき方向についても日々勉強しています。