遺骨には「必ず」六価クロムが含まれているのか?

弊社では、ご遺骨に六価クロムが含まれていないかどうかを検査し、含まれている場合には液剤による無害化処理を行っています。この検査と無害化処理は基本料金に含まれており、お客様から追加料金をいただくことはありません。

「遺骨には六価クロムが含まれている」という表現

粉骨代行業者や散骨業者などの情報発信を見ていると、「遺骨には六価クロムという有害物質が含まれています」と書いてある場合があります。このような表現だと遺骨には必ず六価クロムが含まれていると考える方もいるかもしれません。

ただ、弊社で六価クロム検出検査を行うと、時には環境基準値(土壌汚染対策法 0.05mg/L)を超える六価クロムは検出されないご遺骨もあります。したがって、あたかもすべてのご遺骨に六価クロムが含まれているかの表現は少し過剰なのではないかと感じています。

散骨にかかわるある業界団体では六価クロムの除去を行わないと散骨しないというガイドラインを設けているところもあり、これに加盟している業者は必ず六価クロムの除去を行っているはずです。「遺骨には六価クロムが含まれている」といった断定的な表現は、無害化処理を行っている業者が他者との差別化を図る意図なのかもしれません。もちろん、六価クロムの無害化処理を行うことを前提にしているのであればこのような表現が不適切だということはいえません。しかし、弊社では「ご遺骨には六価クロムが含まれていることがある」という表現をとっています。その方が正確だと思うからです。

六価クロム検査パックテストの写真

たしかに六価クロムが含まれている場合は無害化処理を行うべきです。しかし、無害化処理には液剤を使いますので、基準値以上の六価クロムが検出されていないご遺骨に無用な液剤をかけるのは避けたいところです(ちなみに、六価クロムの無害化処理は、専用の還元剤(液剤)を噴霧して三価クロムに変換することによって行います。弊社で使用しているこの液剤は、中性で人体にも影響のない安全なものです)。無害化は必要なことなので液剤を使うのはやむを得ませんが、できるだけ自然な形を取りたいので不要なことはしたくないのです。

そのため、弊社では検査試薬によって六価クロムの検出試験を行い、基準値以上の六価クロムが検出された場合にのみ液剤処理を行うことにしています。処理後に再度検査しますので、検出された場合は少なくとも2回、検出されない場合でも1回の検査は必ず行うことになります。無用な処理は避けつつ、検査結果に応じた作業をきちんと行うということを心がけています。

(なお、液剤での無害化処理を行うとご遺骨は濡れてしまいますので、粉砕作業前に十分乾燥させなければなりません。このため、六価クロムが含まれていたご遺骨については、乾燥時間が余計にかかりますので粉骨完了までの時間は少し長くなります(1日~2日程度)。ただし、この乾燥時間は標準作業として別途の費用は発生いたしません。)

遺骨の六価クロムはなぜ生じるのか

クロムは金属の一種です。錆びにくく安定しており、自然界においては単体のクロムまたは化合物の三価クロムとして土中に広く存在しています。クロムや三価クロムは水に対しても極めて安定しており無害な物質です。人体にとっても必須元素ですからご遺体の中にも含まれています。

これに対して六価クロムは非常に強い酸化作用を有しており、接触すると有機物を酸化してしまいます。したがって、人の体に触れると、皮膚の炎症を起こしたり癌の原因になったりします。常温で気化することはありませんが、六価クロムは水に溶けやすい点には注意が必要です(一方、水に溶けやすいので検査しやすく、実際検査の際には水の中に遺骨を入れて行います)。そのため、たとえば環境基本法における土壌環境基準では0.05mg/Lといった基準が定められているものです。

焼骨に含まれていることがある六価クロムは、火葬をする際に棺を載せる比較的安価なステンレスの架台が、長期間(数十年単位)にわたって高温にさらされることによって発生し遺骨に付着したものと考えられます。火葬場の残骨灰の中には六価クロムが含まれていることが知られていますが、実際には火葬炉内の灰よりも集塵灰の方に高濃度で含まれていることがわかっています。

火葬場での残骨灰の処理に関しては、各自治体がさまざまな処理方法を採っており(専門業者が貴金属類を取り出している場合もあり、それを想定して一定以上の価格で売却している自治体もあります)、その場合は有害物質を適切に処理しなければならないのですが、焼骨については特に規制は設けられていません。

焼骨に六価クロムが含まれることがあるという問題は、火葬場のステンレス架台をレンガ造のものに変更するなどすれば解決します。また、安価なステンレス台を長期間にわたって使うことをやめるのも方法でしょう。しかしいずれにせよ予算の必要なことですし、その原資は住民の税金ですからそう簡単なことではないのかもしれません。ただ、火葬場の設備が更新されることによって焼骨に六価クロムが含まれないという場合もあるでしょう(実際、一部の自治体での新規火葬場設置の仕様は六価クロム発生を抑制するものになっています)。

土に触れていた遺骨

先に述べたように、六価クロムは容易に水に溶けやすく、また有機物に触れると有機物を酸化して三価クロムに変化します。土の中にはバクテリアなどの有機物が多く含まれているため、お墓の中に埋葬されており土上に置かれていた焼骨は、当初六価クロムが含まれていても、有機物と反応して六価クロムが減少している場合があるのではないか推測します。

弊社でも、骨壺のない状態で埋葬されていたご遺骨から六価クロムが検出されないことがあります。それには、このような事情がかかわっているのかもしれません。ただ、当初の含有状態について検査をして比較しないと本当のところはわからず、これはあくまでも漠然とした推論に過ぎません。

自宅に焼骨を安置していても六価クロムを心配する必要はない

上に述べたように、六価クロムは常温で気化することはありませんので、骨壺に入った焼骨をご自宅に安置しておく場合に、六価クロムの害を心配する必要はありません。しかも、上に述べたようにすべてのご遺骨に六価クロムが含まれているとは限りません。

ただ、濡れた手でご遺骨を触ることや、(あまり考えられませんが)ご遺骨を口に触れたりするようなことは避けた方が良いのは確かです。また、ご遺骨を粉骨すると粉末状になった遺骨を吸い込んでしまいやすくなるので、特に無害化されていないご遺骨については吸い込まないように気を付けましょう。