お墓の悩みは墓じまい・散骨で解決できるか?

少子高齢化、また多死社会といわれる現代においては、葬送・供養に関する考え方も変容しています。家族のあり方も刻々と変化しており、宗教観・死生観・家族観の変化にともなって、お墓に関する意識・悩みも一昔前はほとんど問題にならなかったようなものとなりつつあります。

この記事では、お墓に関する悩みの中で比較的多いものを取り上げ、その解決方法のうち特に散骨が解決策になるのかどうかについて述べていこうと思います。

たくさんのお墓が並ぶ墓地の写真

写真と記事内容は関係ありません

お墓の悩みで多いもの

では、お墓に関する悩みで比較的多いものについて見ていきましょう。主要自治体における市民意識調査やその他業界団体等のアンケート集計結果などを参考にして、代表的なお墓の悩みを取り上げていきます(参照: お墓は必要?墓地に関する意識 ~主要自治体での調査を参考に~ )。

お墓の維持管理が大変

お墓の悩みで最も多いものは、「お墓の維持管理が大変」ということです。これは、既にお墓を持っている人も、現在自分のお墓を持っていない人も同じで悩みの中でトップの比率を占めています。

加えて、「お墓の維持が大変で子供に負担がかかる」という悩みもあります。「お墓の維持管理が大変」という悩みの中には、自分自身の負担だけでなくお墓を承継することになる子供への配慮も含まれているということですね。

また、「お墓の取得費用や維持管理の費用」についての悩みも多数です。やはり手間の問題だけではなく、金銭的負担の問題は現実的に大きなものとなっているようです。

これらをまとめて「お墓の維持管理」の問題だとすると、人々の生活にとってお墓の維持管理がいかに負担になっているのかがわかります。

お墓の承継者がいない

次に多い悩みは「お墓の承継者がいない」というものです。これは既にお墓を持っている人の中にも多く、お墓を持っていない人がお墓の取得を希望しない理由の中でも高い比率を占めています。まさに少子化の影響によってお墓があってもそれを継ぐ人がいないという問題は切迫しているのだといえるでしょう。

また、お墓の承継者がいないという問題は、これからお墓を取得しようとしている人でも意識している人は多くいます。承継者がいないのにお墓を新たに取得するということは、そのお墓の行方について問題を先送りしてしまうことになりますが、「お墓が必要だ」という既存の価値観にとらわれていると仕方ないことなのかもしれません。

お墓が遠く墓参りや手入れが十分にできない

また、お墓の立地の問題として、自宅から遠くお墓参りをすることが難しいという悩みも多くあります。

たとえば、遠方にある実家の近くにお墓があるのであれば帰省の機会にお墓参りをすることはできますが、両親が亡くなるなどで帰省をしなくなると途端に墓参りの機会がなくなるということは良くあることです。会いに行く人がいないのにお墓参りだけをするのは現実的に難しいことというのは理解できます。気持ちとしては供養のためにお墓を訪れたいけれど現実的に難しいというのも、心理的には負担になることでしょう。

加えて、放置しているとお墓はすぐに荒れてしまいます。雑草が蔓延ったり、墓石やその周辺が破損したりしていることに気づかず荒れていくというお墓は全国にたくさんあります。そのため、現在はお墓掃除の代行業者などもあり、ふるさと納税の返礼品で墓掃除をしてくれるというものまで登場しています(参照: ふるさと納税の返礼品としてお墓の見守り・清掃を提供する自治体が増えている )が、ある程度の出費が必要なことではあります。

夫や妻、義父母と同じ墓に入りたくない

比率としては多いわけではないのですが、従来は当然のように同じお墓に入っていた夫や妻、あるいは義父母と同じお墓には入りたくないという悩みも一定の比率であります。この悩みは多くの場合、生前の人間関係の問題が原因となっているものです。

お墓の悩みの解決策

墓じまいをして合葬墓または散骨

墓じまい

お墓の悩みのうち「お墓の維持管理が大変」「お墓の承継者がいない」「墓参りや手入れが十分にできない」といった悩みは、自分や子供が管理しなければならないお墓があるから生じる悩みです。したがって、墓じまいをすればこれらの悩みからは解放されます

「墓じまい」とは、現にあるお墓の墓石を撤去して墓地を更地に戻し、納められていた遺骨を取り出して他の供養方法をとることをいいます。したがって、墓じまいという場合には、広い意味では他にお墓を用意して遺骨を移すという場合も含まれますが、お墓の悩み解決という点では新たに個人・家のお墓を設けないものをここでは「墓じまい」と呼ぶことにしましょう。

現在、墓じまいをする人は増えています。2010年頃から年々増加する傾向にあり、これは日本の総人口が減少していく動向とリンクしています。今や墓じまいをすることは珍しいことではなく、今後も増加していく傾向になるはずです。

もっとも、墓じまいをする場合には、一時的に手間と費用がかかります。墓じまいをする手順や費用、トラブルを避ける方法などについては、以下の記事をご参照ください。
・ 墓じまいの方法 ~手順・手続から費用相場・トラブル事例まで~
・ 安く墓じまいをする方法は合葬墓の利用・自分で散骨

合葬墓・永代供養塔の利用

個人や家のお墓をなくす墓じまいをした場合に問題になるのは、取り出した遺骨を行方や、ご自身が亡くなった場合にどうするのかということです。これについては、最近は公営の合葬墓(1つのお墓に多数の遺骨を埋葬する形式の墓所、仏教では永代供養塔などと呼ぶ場合もある)なども増えている(参照:川崎市の合葬型墓所が緑ヶ丘霊園に完成。5月に内覧会、7月に利用受付開始。 )ので、これらを利用するのも1つの方法です。費用も最初にかかるだけで比較的安価なので利用しやすいでしょう。

合葬墓の注意点

合葬墓を利用する場合に注意しておくべきことは、一度納骨した遺骨を取り戻すことはできないということです。合葬墓の中には骨壺に入れた状態で納骨する形式のものもありますが、多くの場合は骨壺から出して他の方のご遺骨と一緒の場所に埋葬するので、ご遺骨を分別して取り出すことは不可能なのです。

また、運営母体によって合葬墓で責任をもって供養(合葬簿施設自体の管理、ご遺骨の供養(法要等の儀式))を行う期間が定められていることもあります(例:30年間責任を持って供養するなど)。もちろん、どのような供養方法であっても「未来永劫」ということは不可能でしょうが、事前に良く確認した上で利用するようにしましょう。

散骨をする

また、散骨をするというのも1つの方法です。

散骨は日本ではまだメジャーな葬送方法とまではいえませんが、認知度もあがり散骨を行う人も増えてきました。いくつかの注意点をきちんと守れば、散骨が違法となることはありませんし、散骨に対する社会的な許容度もかなり上がっていると思います。

散骨の方法や準備、法律や条例との関係などについては以下のカテゴリーで記事を書いていますのでご参照ください。
・ 散骨の基礎知識

散骨の注意点

散骨は多くの場合、海で行われます。土地所有権や近隣関係の点で地上で行うことには困難が伴うことが多いからです。また、散骨を希望される方の多くも海での散骨を希望される場合が多いのが事実です。

海に散骨すると、当然ながら遺骨を取り戻すことはできません(山でもそうですが散骨後しばらくは遺骨の粉を確認できることもあります)。後で「少しでも遺骨を手元に残しておけば良かった」と思っても取り返しはつきません。散骨によってご遺族が「どこに行けば会えるのだろう」と寂しい想いをするということも稀にあります。散骨をした海域を故人の眠っている場所と考えることもできますが、散骨したご遺骨は海の中で拡散したり、潮に乗って海を旅したり、生物の体内に取り込まれることもあるでしょう。したがって、「海そのもの」が故人の眠っている場所、あるいは「地球そのもの」が故人の永眠場所だと考えられるかどうか、事前にしっかり考えておくことが必要です。

墓を移転するのはお金がかかる

お墓が遠方にあってお墓参りやお墓の手入れが行く届かないという悩みに関しては、通いやすい場所にお墓を移転するという方法もあります。

この場合、既存のお墓を原状回復して遺骨を取り出し(墓じまい)、新規のお墓を取得しなければなりません。墓じまいには一時的にお金がかかりますし、お墓の新規取得にはもっとお金がかかります。さまざまな調査によると、お墓の取得費用はおおむね100万円から300万円、平均的には170万円程度といわれています。

これらの金銭が負担できるのであれば、通いやすい便利な場所にお墓を取得してご遺骨を移すというのも良いです。ただ、家や家族のお墓を持ち続けるということは、お墓がいくら近くにあっても上記のようなお墓に関する悩みの多くは続くことになることには注意が必要です。

自分の遺骨の行方は自分で決められる

結婚をしている(いた)からといって必ず夫婦が同じ墓に入らなければならないとか、家のお墓に入らなければならないという法律があるわけではありません。しかし、同じお墓に入ることが一般的な慣習となっているため、何か手立てをしない限りはそうなってしまうことがほとんどです。

ただ、前述の通り夫婦が必ず同じお墓に入るべき、あるいは家のお墓に入るべきだといったことが法律で決められているわけではありません。放っておくと慣習によって一般的な取り扱いをされてしまうというだけです。

したがって、ご自身の意志(遺志)をはっきりとした形で残しておけば、ご自身のご遺骨の行方を自分で決めることができます。具体的には、遺言書で遺骨をどうするのかを明確に残しておくことです。ご自分個人のお墓を用意したり、ご友人と入るお墓を用意するということも考えられますし、合葬墓への納骨、あるいは散骨を希望されることもあるでしょう。慣習に従わない以上、残された方が悩むことのないように配慮しておくことが大切です。ただ、新たなお墓を設けることは、やはりお墓の維持管理や承継者の問題が生じますので、その点は意識しておいた方が良いでしょう。

なお、遺言書はその作成方法を誤ると効力がない場合もありますので、きちんとした形式で残しておくことが大切です。公証役場で公正証書遺言を作成すれば安心でしょう。

余談: 婚姻関係終了届・復氏届

余談ですが、夫や妻が亡くなると婚姻関係は終了しますが、配偶者の血族との姻族関係は法律上継続します。姻族関係が法律上直接どのお墓に入るのかを左右するものではありませんが、「このお墓に入りたくない」というような場合は姻族関係を断ちたいと思っていることも多いでしょう。そのような場合は、「姻族関係終了届」を市区町村役場に提出すれば姻族関係は終了します(他の方の意思に左右されることはありません)。ただ、姻族関係終了届によっては戸籍や姓までは変更されません。これらを結婚前の状態に戻したい場合は「復氏届」を出すことになります。いわゆる「死後離婚」と呼ばれているものですね。

墓じまいや散骨はお墓の悩みを解決する

ここまで見てきたように、お墓の悩みを解決するために、墓じまいや散骨は有効な方法です。今でも家・先祖代々のお墓を承継していく人は多くいますが、一方で墓じまいをする人も年々増加傾向にあり、この傾向は今後強まる一方でしょう。地方自治体が公営墓地における合葬墓の整備を推進する方向にあるのも、市民の声に耳を傾けニーズに応えるものです。

日本の人口は減少する一方ですし、社会的資源も限られています。お墓や供養に対する考え方も社会状況に合わせて変化していくのは当然のことだと思います。墓じまいをして合葬墓を利用したり散骨をしたりすることは、お墓に対する悩みを解決し、社会の状況に合わせた判断をする1つの方法です。