お墓は必要?墓地に関する意識 ~主要自治体での調査を参考に~

自分や自分に近しい人たちのお墓に関する考え方は時代と共に変化しています。また、自分だけでなく、他人がどのようなお墓を選ぶかについての許容度も今と昔では異なってきています。これらの変化は、大きな流れでいえば、個人の選択は個人に委ねられるべきであるという個人主義的1な考え方が定着してきたの表れだともいえますし、宗教観・死生観・家族観の変化、実体としての家族のあり方の変化なども影響していると思われます。ただ、これらの考え方の変化は、より現実的な問題、たとえば金銭的負担の重さなどと無関係ではないでしょう。

そこで、現在人々がお墓に対してどのような意識を持っているのか、またそのような意識の背景に何があるのかについて、主な地方自治体が実施した意識調査結果を参照しながら見ていきます。

主要自治体における意識調査の結果

今回は、比較的人口の多い自治体で公表されている比較的最近の意識調査結果を参照します。具体的には、さいたま市2・東京都3・横浜市4・名古屋市5・大阪市6・福岡市7で実施されたものです。自治体によって質問項目や質問の仕方が異なるため、各項目ごとに該当するデータのある自治体の調査結果を取り上げます。そのようなデータとしてご覧ください。また、グラフはデータを見やすくするために筆者が作成しましたが、各自治体によって調査時期が異なることにご注意ください。

墓を取得したいという希望があるかどうか

既にお墓を持っていれば改葬のために新たなお墓を必要としていない限り、新たなお墓を取得する希望はないはずです。そこで、お墓を持っている人と持っていない人の割合を見てみましょう。

既にお墓を持っている人の割合

調査時点で既にお墓を持っている人の割合は、さいたま市55.0%、東京都61.9%、横浜市59.0%、名古屋市40.6%、大阪市40.1%、福岡市66.9%でした。グラフで見てみましょう。8

グラフ - お墓を既に持っているかどうか

お墓を既に持っている人の多くは、自分の代以前からのお墓を継承した人たちですが、中には新たに自分で墓を購入した人もいます。自治体によってお墓を持っている人と持っていない人の割合が逆転していますが、いずれにしてもお墓を持っていない人が比較的多くいることがわかります。

墓を持っていない人の取得希望の有無

現在墓を持っていない人のうち、新たに墓を取得することを希望している割合は、東京都で36.3%、大阪市で18.4%となっています9

グラフ - お墓を持っていない人の取得希望の有無

東京都ではお墓を必要としている人の割合の方が不要と考えている人よりも大きくなってはいますが、10年前の調査と比較すると不要としている人の割合は増加し、拮抗するまでになっています。大阪市では新たなお墓は不要だという人が多い結果です。

お墓が必要かどうかわからないと答えている人の割合も高く、東京都のデータでも10年前に比べてお墓の要否について「わからない」と回答している人の割合は増えています。お墓は絶対に必要だという強固な考え方が少しずつ緩くなっている状況を反映しているものでしょう。

墓の取得を希望しない人の理由

お墓を不要と考える人の多い大阪市のデータを少し詳しく見てみましょう。なぜお墓を不要だと考えるかについて、45.2%の人が「お墓の維持が大変で子供に負担がかかる」と回答しています。また、「お墓を用意しても継ぐ人がいない」が19.6%、「お墓の入手や維持にお金が要る」が13.1%、「お墓の維持、管理が面倒」が10.1%となっています。

グラフ - お墓を持っていない人が取得を希望しない理由

墓の取得を希望しない理由のほとんどは、お墓の維持・管理の負担や費用を子どもに引き継がせたくない、あるいは、自分自身がこれらの負担を負いたくない、といったものです。お墓そのものへの考え方はさておき、少なくともお墓にまつわるお金や手間などに対する負担感が強いことは明白だといえます。

お墓を取得したい人が重視する事項・不安な事項

 お墓を取得したいと考える人が最も重視する事項、あるいは不安な事項は何か

お墓を取得するにあたって不安な事項や、取得するとしたらどのような点を重視するのかについて見ていきましょう。各自治体ともに微妙に異なる質問の仕方をしていますのでそれぞれ見ていきます。

東京都 – お墓を持つ上での問題点

まず、東京都ではお墓を現在または将来必要としている人に対して、「あなたが現在お墓を持つ上での問題点は何ですか」としてお墓を持つ上で不安に思う点について質問しています。

回答で最も多いのは「お墓の維持管理」で69.7%、次いで「お墓に要する費用負担」が60.6%「お墓の継承者」が56.1%と、お墓にまつわる課題を凝縮したような回答結果となっています。

グラフ - お墓を持つ上での問題点(東京都)

横浜市・大阪市・福岡市 – お墓を取得するにあたって重視する点

また、横浜市・大阪市・福岡市では、「お墓を取得するにあたって重視する点」を質問しています。

横浜市では、「お墓の価格、維持管理費」という経済的な面が43.1%で圧倒的に多くなっています。次いで「墓地の設置者に対する信頼や安心感」が16.5%、「自宅からの距離」が12.5%です。

グラフ - 墓地を取得するとき最も重視する事項(横浜市)

大阪市では、「墓地までの交通利便性」が60.1%と最も多くなっていますが、「墓地の管理、運営主体」が56.5%「お墓の価格(取得費用、管理費用)」が48.0%といずれも非常に多い回答となっています。

グラフ - お墓を所有する場合総合的にみて何を重視するか(大阪市)

福岡市では「費用(取得費や管理費)」が82.1%と圧倒的に多く、次いで「自宅からの距離や交通利便性」が65.6%、「管理や運営の形態」が56.4%です。

グラフ - 墓地・納骨堂の取得について重視する点(福岡市)

自治体によって質問の仕方、1つ回答か複数回答かなどの違いがあるので、結果が多少異なりますが、どの自治体においても、お墓の取得費や維持管理費への関心は非常に強くなっています。多くの人はお墓を取得するとしても限られた予算の中でということでしょうから当然といえば当然でしょう。また、墓地の設置・運営主体を信頼して良いのかどうかについても慎重に考えたいとしている人が多いことも良くわかります。また、自宅からの距離や交通利便性などを気にする人が多いのは、やはり墓参りの負担を軽減したいという希望の表れだと思われます。その中には、頻繁にお墓参りをしたい人もいるでしょうし、お墓参りをしなければならないなら負担は少ない方が良いという人がいるでしょう。

名古屋市 – 市が運営するお墓・納骨檀などにどのようなことを望むか

一方、名古屋市では、「市の運営するお墓や納骨堂などにどのような点を望むか」という質問をしています。実質的にお墓を取得するにあたって重視する点、心配な点をみることのできる回答となっています。

最も多い回答が、「墓地使用料や年間管理費などの費用の妥当性」で34.5%、次に「管理に手間がかからない」が14.5%、「自宅からの距離が近い・交通の利便性」が12.8%と続きます。

グラフ - 名古屋市が運営するお墓・納骨堂などに、どのような点を望みますか(名古屋市)

墓地の取得費用・墓地の管理継承・墓地への交通が3大悩み

これら自治体のアンケート結果を見ると、墓地の取得を考えるにあたって最も大きな心配事は次のようなものであることがわかります。

  1. 墓地の取得と維持管理にかかる費用
  2. 墓地の継続管理と継承
  3. 墓地への交通利便性

これらはいずれも墓地を取得することにまつわる負担に関するものですが、墓地取得希望の有無のアンケート結果も参考にしながら考えると、自分自身の負担だけでなく、お墓を承継する人が負うことになるであろう負担についても心配しているものと推測されます。

お金の問題、手間の問題、時間・体力の問題の各面にわたって心配に感じる人が多いということですが、どの自治体でも共通して一番の関心事はお金の問題であることもわかります。

実際に墓地を取得・管理するのに必要な費用は?

それでは、墓地を取得・管理するのに必要となる費用は実際いくらぐらいなのでしょうか。もちろん、地域や設置管理者の選択によって費用は異なりますが、横浜市が実際の取得管理費についてアンケートをとっているので参考に見てみましょう。

既にお墓を持っている人の取得費用や管理費用について

横浜市の調査結果には、墓地を持っている人または利用できる墓地のある人に対して、墓地の総取得費(永代使用料、墓石代、工事代等取得時にかかる総額)を尋ねているものがあります。それによると、「わからない」という回答を除き、もっとも多いのは「100~300 万円未満」で21.1%次いで「300 万円以上」の11.3%となっています。「わからない」というのは、自身で墓地を購入したのではなく先代から墓地を継承したという場合が多いためだと考えらえます。

グラフ - 墓地の総取得費

年間管理費については、「1万円から2万円未満」と「5千円~1万円未満」という回答が最も多くなっています。

グラフ ‐ 墓地の年間管理費

これらを見てみると、まず墓地の総取得費の負担はかなり大きいというのがわかります。横浜市の調査結果で総取得費を把握している人だけを見ると、約75%の人が100万円以上かかったとし、約26%の人は300万円以上のお金がかかったと回答しています。これらの一時的に必要となる金銭とともに、毎年の管理料を支払う必要を考えると、経済的な理由だけでお墓の取得を諦める人がいてもおかしくはないでしょう。

墓地の取得費はどのくらいが適当だと考えているか

実際、同じ横浜市で、墓地の購入を想定して「墓地の総取得費はどれくらいが適当」かを質問したところ、半数以上の人が「100万円未満」と答えています。「考えていない」「無回答」を除き費用について回答した人のうちでは、約65%の人が「100万円未満」と回答していることになります。

名古屋市でも同様の質問をしています。その結果は横浜市よりも現実とのギャップが大きく、「50万円未満」と回答した人が全体の46.4%となっています。「100万円未満」と答えた人は全体の65.8%にのぼっています。「わからない」「無回答」を除き費用について回答した人のうち、約66.2%の人が「50万円未満」と答えており、実に93.9%の人が「100万円未満」と回答しているのです。

グラフ - 墓地の総取得費はどのくらいが適当か(名古屋市)

「これくらいの金額なら…」と考えていても実際との乖離は大きいというのが現実のようです。

実際の価格と人々が適正だと考える価格のギャップが大きい

これらのアンケート結果からすると、実際に必要となるお墓の取得費などと、人々が適正だと考えている費用とのギャップは比較的大きいといえるでしょう。アンケートでは価格帯の設定が幅広いので詳細まではわかりませんが、少なくとも50万円程度、多く見積もれば150~200万円程度のギャップとなっている場合もあるのではないかと思われます。

 

まとめ

主要な自治体における住民アンケートの結果を見ると、現在墓地を持っていない人の中に、墓地の購入を希望しない人が思いのほか多いことがわかります。その理由の多くは、墓地を取得・維持管理する経済的負担への心配、承継者に負担を残すことへの躊躇、承継者の不在などとなっています。

お墓を建てて供養することが当たり前だという価値観は少しずつ変化し、自分のお墓は無くても構わないという考え方は増えています。それは死生観や宗教観の変化ももちろんありますが、現代において墓地から生じる負担が相対的に重く感じるものになっていることが大きく影響しています。これについては、お墓が必要だという考えが薄まってきたからこそ負担を重く感じるようになった可能性もありますし、負担を重く感じるからこそそこまでしてお墓を持つ必要はないと考えるようになったという可能性もあります。実際には、この両面が相互に影響しながら、供養に対する意識は変化しているのでしょう。

お墓を取得・維持する負担に耐えられない人が安心して墓地を得られるような仕組みがあれば良いのでしょうが、現実問題としては難しい状況です。墓地の不足が叫ばれる一方で無縁仏となっているお墓も増えています。地方自治体の中には、民間の墓地よりも安価で安心できる墓地の供給の確保のために新たな施策を行っているところもありますが、それもまた税金で賄われることを考えれば一筋縄で解決できる問題でもありません(参照:墓じまいで原状回復義務が免除される明石市の特例は効果を上げている)。

また、多死社会、少子化社会の中で今まで通りの墓地のあり方を維持していくのは現実には困難だという面もあります。そのため、各自治体においても、合祀を前提とした自然葬墓地の開発などの取り組みも徐々に進んではいます。一家に一つのお墓というあり方から、「みんなのお墓」への変化も少しずつ進んでいく方向にあるように思います。また、特定の墓地は不要だという考え方、たとえば散骨のような供養方法への認知・許容度も今後高まっていくのではないかと予想されます(散骨に対する意識の変化についても今後記事にしようと考えています)。

 


  1. ここでいう「個人主義」とは、それぞれが個人の尊厳を尊重し、互いの自己決定を重視するという考え方を指しています。日本国憲法13条にも表れている考え方です。 
  2. さいたま市墓地に関する市民意識調査報告書 平成27年3月 さいたま市 保健福祉局【さいたま市】 
  3. 平成27年度第6回インターネット都政モニター「東京都の霊園」アンケート結果【東京都公式ホームページ】 
  4. 横浜市墓地に関する市民アンケート調査報告書 平成25年3月 横浜市健康福祉局【横浜市】 
  5. 墓地などに関する意識調査について(健康福祉局八事霊園・斎場管理事務所)- 平成27年度第3回市政アンケート【名古屋市公式ウェブサイト】 
  6. 市政モニターアンケート「墓地に関する意識調査について」(平成28年8月実施)の結果-1【大阪市】
    市政モニターアンケート「墓地に関する意識調査について」(平成28年8月実施)の結果-2【大阪市】 
  7. 福岡市墓地・納骨堂に関する市民アンケート調査 – 平成27年度 福岡市における墓地・納骨堂の需給状況について(アンケート調査結果)【福岡市 ホームページ】 
  8. さいたま市のデータは墓地取得希望の有無の理由から拾っており、「お墓を持っていない」のデータの中に、お墓取得希望の有無について無回答の人々の割合が含まれています。 
  9. 他の自治体のデータでは、墓地所有者と未所有者に分けた取得希望データがなかったためここでは取り上げていません。 

誰もが安価に選択できる葬送の方法を模索中です。また法律・条例や社会的ルールが向かうべき方向についても日々勉強しています。