墓・葬送の新たなあり方を考える契機に ~主要自治体の約7割が無縁墓(無縁仏)の問題を抱えている~

今日は全国的に問題化している無縁墓について興味深いデータがあったので紹介します(無縁墓は無縁仏と呼ばれることもありますが、無縁仏という言葉はより広い意味を持っていますので、この記事では「無縁墓」という言葉で統一しています)。これは確かに厄介な問題ですが、個人的には従来のお墓に対する一般的な意識を変化させる契機になるのではないかと考えています。

全国には多数の無縁墓がある

中日新聞が2018年1月に行ったアンケートによると、公営墓地を運営・管理する主要自治体の7割近くが管理者不在の「無縁墓」を抱えていることがわかりました。

公営墓地を持つ全国の政令指定都市と県庁所在地など計七十三自治体のうち、管理する縁故者がいなくなった「無縁墓(むえんぼ)」を抱えている自治体が約七割に上ることが、本紙のアンケートで分かった。このうち無縁墓の実数を把握しているのは二十四自治体で、合計は一万六千五百十七基・区画だった。

公営墓地7割に無縁墓 政令市など、対応基準なし:一面:中日新聞(CHUNICHI Web)

主要自治体だけで16,517基・区画。一方、厚生労働省が発表している統計データ「衛生行政報告例」によると、無縁墓を墓地・霊園管理者が撤去した数は、2007年度から2016年度の10年間で計35,383件、年平均で約3,500件です(衛生行政報告例【政府統計の総合窓口】「埋葬及び火葬の死体・死胎数並びに改葬数,都道府県-指定都市-中核市(再掲)別」データより )。これらの改葬数は公営墓地に限りませんので単純に照合するわけにはいきませんが、毎年相当数の改葬が行われているにもかかわらず主要自治体だけでこれだけの無縁墓が存在するということで、いかに無縁墓の問題が逼迫した問題となっているのかがわかります。

記事によると、アンケート対象の73自治体のうち16自治体は無縁墓の実態を把握していません。したがって、調査した自治体だけでも上記数値以上の無縁墓があることが推測されます。また、アンケート対象となっていない自治体のことを考えると、全国にある無縁墓は相当数にのぼることが考えられます。

無縁墓の処理負担は結局市民にまわってくる

無縁墓は、承継者がいなくなった墓、管理費が一定期間以上支払われなくなり権利者と連絡がとれなくなってしまった墓のことを指します。

お墓を訪れる人もなく、一見無縁墓になっているように見えるお墓でも直ちに無縁墓と断定することはできません。何かの事情で一時的に訪れる人がいないだけかもしれないからです。管理費が支払われなくなった場合も同様です。

かといって墓地・霊園の管理者からすれば、これらの墓を放置しておくわけにはいきません。墓地・霊園の維持管理コストの一部は墓地利用者の管理料によって賄われており、管理料が支払われなければ墓地・霊園管理者の負担は増える一方です。墓地の通路や植栽の維持や水道料金などは墓がある以上かかります。これらのメンテナンスを怠れば墓地は荒れ果て、場合によって危険な場所にもなりかねません。また、誰も訪れない区画を新たな利用希望者に供給する必要もあります。

そのため一定の手続に従えば墓地・霊園管理者が無縁墓を撤去することができるようになっています。「墓地、埋葬等に関する法律施行規則」によれば、官報による公告と、現地での立札の掲示によって縁故者からの申し出を待ち、1年間申し出がなければ自治体からの改葬許可を得て墓を処分できるようになっています。

この手続は1999年の「墓地、埋葬等に関する法律施行規則」改正によって簡素化されたものですが、それでも墓地・霊園管理者にとっては負担です。公営墓地であれば、墓の撤去処理費用は自治体が負担することになり、結局は市民の税金で賄われることになります。実際、上の新聞記事でもこの点を懸念している自治体も多く見られます。

無縁墓改葬の課題については「事務量、経費が多大になる」(愛知県豊橋市)、「遺骨をどこに納めるのが適当か、考え方が整理できていない」(千葉市)、「いたずらに無縁と認定し、公費で撤去することは公平性の点で問題がある」(名古屋市、神奈川県横須賀市)などの意見があった。

公営墓地7割に無縁墓 政令市など、対応基準なし:一面:中日新聞(CHUNICHI Web)

無縁墓の問題を新たな墓・葬送のあり方を考える契機に

現在お墓を持っている人の中には「永代使用料を払ったのだから無縁墓になる心配はない」と考えている人がいるかもしれません。しかし、永代使用料は単に墓地や霊園の区画を使用し続けることへの対価に過ぎません。墓地や霊園の管理規則には別に管理費の支払いなどが定められており、この規則に反する状態が一定期間続けばやはり無縁墓となってしまう可能性があるのです。

子どもがいないなどの理由で墓の承継者がいない場合や、承継者がいても継続したお墓の管理を期待できない場合は、近い将来無縁墓になってしまう可能性が高いというのが現実です。無縁墓になれば、遺骨は墓地・霊園が定めた方法によって処理されます。多くは永代供養塔などの合祀施設で他人の遺骨と混在する形で合祀されます。

各自治体が行った墓などに関する意識調査結果をみると、多くの人が墓の承継については心配しています。現在墓地を持っていない人でも新たなお墓の取得を希望する人は半数にも満たず、自治体によっては2割にも満たないという調査結果もあります。また、取得を希望する人でも多くの人が墓の承継と維持管理については強い関心・不安を抱いています(参照:お墓は必要?墓地に関する意識 ~主要自治体での調査を参考に~)。

人口減少社会に突入した日本において、従来通りに墓を維持していくことが非常に困難であることは否定できません。たとえば、上の記事の中でも福岡県久留米市では市が管理する墓の半数以上が無縁化しているという驚きの結果もあります。つまり、無縁化はすでに非常に身近な問題だということです。

しかし、これらのデータを必ずしもネガティブに考える必要はないのかもしれません。この現状は、これまでの「お墓は各家が管理維持していくべきもの」という常識自体を揺るがすものです。無縁化を防ごうと墓じまいを検討する人の中には「人並みに墓を維持できない」という想いを負担に感じる方もいます。しかし、既に日本はお墓を個人で維持できない人が多数生じているのです。全国的な調査が行われていないので可視化されていないだけで、実際には多くのお墓が見捨てられ処理されていっているのです。自ら墓じまいを行うことは、むしろ責任をもって将来に備える行為として褒めたたえられる行為なのではないかと思います。実際、墓の所有者が自主的に改葬(墓じまい)を行っている数は年々増加傾向にあり、日本においてお墓に対する意識が大きく変わっていく可能性を示しています。

2007-2016年度改葬数の推移グラフ(厚生労働省-衛生行政報告例データより)
※衛生行政報告例【政府統計の総合窓口】「埋葬及び火葬の死体・死胎数並びに改葬数,都道府県-指定都市-中核市(再掲)別」データより 

省スペースな納骨場所や供養方法の簡素化など、日本はお墓のあり方を大きく転換していく時期に来ているのではないでしょうか。実際、墓地・霊園でも合祀型の墓所整備が進みつつあります。また特定の墓を設けない散骨のような葬送方法への認知・許容度も上がっています。宗教観や死生観などは個々人に委ねられるべきものですが、物理的な墓のあり方についてはもう少し社会的コンセンサス形成の試みがなされていくべきではないかとも思います。

 

誰もが安価に選択できる葬送の方法を模索中です。また法律・条例や社会的ルールが向かうべき方向についても日々勉強しています。