川崎市が緑ヶ丘霊園に合葬墓を整備
川崎市は多数の遺骨を同じ場所で納骨し供養する「合葬墓(がっそうぼ)」と呼ばれる施設を、2018年度に高津区の緑ヶ丘霊園で整備するとしています。平成30年(2018年)1月19日に公表された「川崎市営霊園整備計画(案)」1 2の中で示されています。
これまでは市営霊園において無縁化してしまった墓の処理として、遺骨を「無縁合葬型墓所」に移すことが行われていました。しかし、今回整備される「合葬墓」は自らや遺族が希望する場合に納骨することができる「有縁合葬型墓所」と言われるものです。川崎市は平成27年(2015年)8月に公表した「川崎市営霊園の整備と管理の方針(案)」3の中で既に合葬墓の整備を打ち出しており、今回の整備はこれを具体化したものとなります。最初からこの施設の利用を希望する人だけでなく、既存の墓を墓じまいした人が利用することも想定されており、約20,000体の遺骨を納めることができる規模の施設が計画されています。
この「川崎市営霊園の整備と管理の方針(案)」で紹介されている川崎市の市民意識調査の結果は興味深いものです。平成2年(1990年)に従来型の墓地を希望している人は52.6%であったのに、平成24年(2012年)には25%にまで減少しているのです。一方、従来型に比べて集約化・立体化された墓所や合葬型墓所を希望する人の割合は79.0%にも達しています。さらに「墓所として個々の土地を必要としない」とする人は半数近くもいます。この約20年間の間に、市民の意識は大きく変化し、墓の個別管理の不合理性や過剰な負担感などが認知されてきたとも言えます。墓の承継者がいなかったり、子どもの代に墓の管理負担を負わせたくないという市民の切実な想いもあるでしょう。
市民の多様なニーズに応えるため、川崎市では既に早野聖地公園に「集合個別型墓所」や「壁面型墓所」、「芝生型墓所」などを整備していますが、今回の緑ヶ丘霊園における合葬墓整備は、市民意識の変化を受けてさらに一歩進んだ霊園運営を行うものとなっています。
他にも東京都立の小平霊園には樹木型合葬埋蔵施設などもありますが、今後も各自治体が合葬型施設を増やしていくことが予想されます。無縁墓を防ぐと同時に墓地の供給を確保し、社会的資源をあまり多く必要としないような墓所のあり方に変化していくことは、社会全体としてみれば好ましいことではないかと思います。
追記: 2019年4月に合葬型墓所は完成し、新たな記事を書きました。
参照:川崎市の合葬型墓所が緑ヶ丘霊園に完成。5月に内覧会、7月に利用受付開始。
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