墓じまいの方法 ~手順・手続から費用相場・トラブル事例まで~

最近、墓じまいをする人が増えています。「墓じまい」とは、現にあるお墓の墓石を撤去して墓地を更地に戻し、納められていた遺骨を取り出して他の供養方法をとることをいいます。「墓じまい」と呼ばれるものの中には、新たなお墓を準備して遺骨の引越しをする「改葬」と、家のお墓自体を失くしてしまう場合とがあります。古いお墓にだけ着目すれば、いずれも墓石を撤去して墓地を更地に戻すという点で共通していますが、新たなお墓を準備するかどうかは墓じまいをする理由によって異なります。

遠方にあるお墓に墓参りをする負担を減らす目的であれば、居住地の近くに墓地を準備して新たにお墓を建てるという場合も多くあります。一方で、お墓の承継者がいない場合、承継者がいてもお墓の維持管理の負担を負わせたくないような場合には、古い方のお墓から取り出した遺骨は新たなお墓に入れるのではなく、合同墓や共同供養塔に納骨したり散骨したりします。

墓じまいが増加している理由のひとつは日本が人口減少社会に入ったことです。亡くなる人が多くなる一方で、お墓を引き継ぐ人は少なくなっているのです。また、経済的なゆとりがないことや、「家」に対する考え方、家族観、死生観、宗教観などの変遷も影響があるでしょう。実際、「改葬」が行われた数は2010年以降急激に増加しています(参照:墓じまいの現状と人口減少社会 ~次世代に問題を先送りしないために~ 2.2.自主的な墓じまい(改葬)はどれくらい行われているか)。

今回は、身近になってきた「墓じまい」について、その手順方法、費用、行政手続などについて説明しましょう。

花の飾られる墓が並ぶ写真

写真と記事とは関係ありません

墓じまいの手順

ここでは、墓じまいを行うにあたって踏むべき手順について、順を追って説明していきます。

親族等で話し合いをする

お墓に関することを決める場合には、民法上の「祭祀承継者」の意向が決定的に重要です。「祭祀継承者」は故人から「系譜、祭具及び墳墓の所有権」を引き継いだ者ですが、「墓地の所有権」、「墓地の使用権」、「遺骨」についても、祭祀承継者に帰属すると考えられています。

民法897条
系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。
2 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。

とはいえ、故人のご遺骨の行方については、「祭祀承継者」以外の親族も強い関心を持っていることが多く、この方々の意向を無視すると感情的な対立やトラブル発展することも少なくありません。したがって、墓じまいをする前には親族との十分な話し合いをしておくことが大切です。

遺骨の新しい受け入れ先を確保する

新しいお墓に遺骨を移す場合には、当然ながら新しい受け入れ先を確保しなければなりません。

受け入れ先を確保できたら、新しいお墓を設置する墓地の管理者から「受入証明書」を取得します。この「受入証明書」は、現在のお墓のある自治体から「改葬許可証」を取得する際に必要となります。

墓地の管理者への連絡

現在のお墓のある墓地や寺院などに、墓じまいをする旨の連絡をします。通常は専用の申請書によって墓じまいの意思を正式に伝えることになります。お寺などでは、墓じまいをする際に「離檀料」が必要となる場合が多いため、必要な手続や費用などについては詳細に確認しておくと良いでしょう。また、墓石の撤去業者などへの依頼についても、お寺などの指定業者に限っている場合があるので確認をしておきます。

特にお寺などが管理する墓地の場合、墓じまいの作業工程が迫っている状況で連絡するのではなく、より早い段階で墓じまいの意向を伝えておくことが大事です。これまでお墓を守っていただいたお寺などへの礼儀として早めの相談をするように心がけたいものです(後に述べる離檀料トラブルの回避にもつながります)。

また、墓地の管理者から「埋葬証明書」を取得します。これは、現在のお墓のある自治体から「改葬許可証」を取得する際に必要となります。

改葬許可証の取得

既に埋葬されている遺骨を取り出すには、その墓所のある自治体から発行される「改葬許可証」が必要となります。「墓地、埋葬等に関する法律」で改葬には市長村長(特別区長)の許可を得なければならないとされているからです。

改葬許可証を得るには、現在の墓地のある市町村(東京特別区)に対し、「改葬許可申請書」とともに「受入証明書」「埋葬証明書」を提出して申請します。改葬許可申請書は遺骨1体につき1通ずつ必要となります。

尚、墓じまいをしても新たなお墓に納骨する予定がない場合(散骨予定、自宅供養予定)には「受入証明書」を提出することは不可能です。その場合は、「改葬の理由」欄には「自宅供養をするため」、「改葬の場所」欄には「自宅」などと記入しておくと良いでしょう。散骨予定の場合に「改葬理由」「改葬の場所」などに「散骨」や散骨予定場所などを記入すると、自治体によっては申請が通らない可能性もあります。散骨は現在法律上明確な位置づけがなく、「葬送の方法として節度をもって行われれば違法ではない」と解されているものの、役所としては正式に適法とも違法ともいえない状況だからです(参照:散骨の法律や条例の知識 ~散骨時の注意点やマナーを知るために~(2017.12最新 詳細版))。自宅供養に関しては、これを禁止する理由は法律上一切ありません。

撤去業者への依頼

墓石の撤去工事や墓地を更地に戻す工事などはもちろん、遺骨の取り出しも、通常は石材店などに依頼します。お寺の管理する墓地などでは、特定の石材店が指定業者となっている場合があるので確認の上業者を選定しましょう。

遺骨の取り出し(魂抜き、閉眼法要)

お墓から遺骨を取り出す際には、「魂抜き」「閉眼供養」と呼ばれる儀式を行うのが通常です。「お性根抜き」や「遷仏法要」などと呼ぶ場合もあります。宗旨宗派によって異なりますが、概ねお墓にはご先祖の魂が宿っているという考え方からくる儀式であり、通常は墓地のあるお寺の住職などが読経をするなどする法要です。法要なのでお布施などが必要となります。

遺骨は、お墓の撤去工事などを依頼した石材店に取り出してもらいます。

離檀

お寺の管理する墓地に現在のお墓がある場合、そのお寺の檀家となっていることが通常です。現代では檀家制度へのなじみは薄くなっていますが、檀家としてお寺にお墓を守っていただいているということですので、墓じまいをする場合には檀家を離れるということを意味します。

檀家を離れる、つまり離檀をする際には、これまでのお礼を込めて「離檀料」をお寺に納めるのが通常です。離檀料は一種のお布施であり、明確な金額の決まりがないことがほとんどです。ネット上では離檀の阻止を意図したお寺から高額な離檀料を請求されたなどのトラブル情報を見つけることができますが、そのような極端な例は稀です。墓じまいについて早めにお寺に相談をし礼儀を尽くせば、多くの場合そのようなトラブルは起こらないだろうと思います。

墓石の撤去、墓地を更地にする工事

墓じまいをして、永代使用権を墓地管理者に返上する際には、墓地を更地に戻すことが必要となります。いわゆる原状回復工事です。これらの工事は石材店が行うのが通常ですが、墓地によっては指定業者が定められていることがあります。

新しいお墓への納骨、自宅供養、散骨など

新たなお墓や合同墓などに納骨する場合には、墓地管理者に「改葬許可証」を提出して納骨をします。

宗旨宗派によって異なりますが、納骨の際には「魂入れ」、「開眼供養」と呼ばれる法要を行うのが通常です。

墓じまいの費用

書類発行の費用

役所の発行する「改葬許可証」の発行手数料は無料です。

「受入証明書」「埋葬証明書」などの書類の発行手数料は、その墓地・霊園によって異なります。通常は数百円から数千円の範囲でしょう。

魂抜き、閉眼法要など法要の費用

遺骨をお墓から取り出す際に行う「魂抜き」、「閉眼法要」などの法要にはお布施が必要です。お布施なので明確な金額の決まりはなく、あくまでも「気持ち」とされていますが、通常は2万円から5万円程度が相場でしょう。

新たなお墓に納骨する場合には、「魂入れ」「開眼供養」などの法要も必要です。その場合の費用も「魂抜き」などの場合のお布施の金額と同様に考えれば良いでしょう。

離檀料

墓じまいをして檀家を離れる場合、「離檀料」をお寺にお渡しするのが通常です。離檀をする際にお金がかかるということについて法的な根拠があるわけではありませんが、慣習上はこれまでお世話になったお寺へのお礼として「離檀料」をお渡しするものとされています。

「離檀料」もお布施の一種であり、それは「気持ち」ということになりますが、法要2,3回分のお布施をお渡しするのが相場の目安です。金額にすると10万円から20万円程度といったところでしょう。

高額な離檀料を要求されて、お寺から離檀を妨害されたとするトラブルも見聞きします。中には数百万円の離檀料を要求されたという話もあります。檀家の減少はお寺にとっては収入減に直接結びつく話ではありますが、このような極端な要求をしてくるケースはごく稀なものです。トラブルになる背景には、離檀に至るまでの経緯に感情的なもつれがある場合も多いように思います。早め早めにお寺に相談をし、礼儀を尽くせばこのようなトラブルになることはほとんどないでしょう。

離檀と魂抜きなどの法要は、それぞれ別個のものとしてその都度お布施をお渡しすることになりますが、相場としては墓じまいに関係するお寺へのお布施トータルで30万円を超えることはないでしょう。

墓石撤去、更地に戻す工事費用

墓石撤去や墓地を更地に戻すための工事は、通常石材店に依頼します。

墓地によっては指定業者が定められており(使用規則などに定められているもの)、その場合は他の業者に依頼することはできません。墓地や霊園では多くの墓地利用者のために、安定継続した墓地環境を提供する必要があり、出入りの業者を指定することで管理維持規定を徹底しているという面があるのです。

工事を依頼する業者を選定する際には、相見積もりを取って価格を比較するのが良いでしょう。指定業者が複数ある場合も同様です。価格の相場としては概ね1平米あたり10万円程度で、1坪の墓地であれば30~40万円程度が目安です。ただ、墓地の立地条件や墓石の数・構造などによって価格は異なってきます。特に急な傾斜地や十分な通路を確保できないような墓地では重機を入れることができず全て人力で作業することになるため、作業時間も人数もかかり価格は高くなりがちです。

新しく遺骨を供養するための費用

現在のお墓を墓じまいした後に、取り出した遺骨を供養する際にかかる費用について説明します。供養方法によって費用は大きく異なります。

新規に墓を購入する場合

新しいお墓を建てて納骨し直す場合には、お墓の取得費が新たにかかります。墓地・霊園によって、また墓地の広さやお墓の種類によって価格は大きく異なりますが、主要自治体における市民アンケートの結果からは、100万円から300万円程度というのが最も多く、その次が300万円以上となっています。

共同供養塔や合同墓などの合祀施設を利用する場合

現在では、さまざまな墓地・霊園に共同供養塔や合同墓と呼ばれる合祀施設があります。これらの中にもさまざまなバリエーションがありますが、他の人の遺骨と混在する形で合祀するような施設の場合、納骨のための費用は10万円程度に抑えられることが多く、安価な選択方法といえるでしょう。

中には、20~30年程度は他の遺骨とは分けて納骨室などに安置され、その後他の遺骨と合わせて合祀されるようなもの、お墓はないものの樹木の根元に近しい人々とともに納骨する樹木葬型の合祀施設などもあります。これらは、上に述べた合祀施設よりも費用は高額になります。

手元供養

遺骨を自宅に安置して供養する自宅供養の場合には特別な費用は必要ありません。もっとも遺骨の数が多い場合には、それぞれを大きな骨壺に入れて安置しておくのは普通の住環境では難しいでしょう。その場合は、遺骨を「粉骨」してかさを減らすという方法もあります。

散骨

遺骨を散骨するという供養方法もあります。

散骨をする場合には、事前に遺骨を細かく粉砕しておく「粉骨」作業が必要となります。自分で粉骨することは不可能ではありませんが、遺骨の数が多い場合や、心情的に抵抗感がある場合には、個人で行うには負担が大きすぎるでしょう。粉骨作業だけを代行してくれる業者もあり、その費用は概ね2万円から4万円程度です(弊社では1万5千円から粉骨を承っています。参照:粉骨サービス内容・料金・ご利用方法)。

散骨を自分で行う場合には、散骨場所までの交通費や宿泊費だけで散骨を行うことができます。

お葬式として散骨を行う場合には、通常葬儀会社などに依頼することになり、25万円から40万円程度の費用がかかります(チャーター便を一家族で利用して海洋散骨を行う場合)。

現在では、散骨を代行してくれる業者もあります。散骨に同行することはできませんが、費用は安く概ね5万円程度で散骨を行ってもらえます(弊社では3万3千円で海洋散骨代行を承っています。参照:海洋散骨代行サービス内容・料金・ご利用方法)。

墓じまいにありがちなトラブル

墓じまいを行う際に起こりがちなトラブルについて説明します。これらに留意することでスムーズな墓じまいができるでしょう。

親族

墓じまいについては、「祭祀承継者」が決めることができますが、法律上問題がなくても親族間での心情的なトラブルに繋がる場合があります。他の物とは異なり、お墓は故人や祖先との繋がりを感じる施設ですので、他の親族が特別な思い入れやこだわりを持っていることもあります。

墓じまいを行おうと思いついたら、まずは関係のある親族に相談するのが良いでしょう。特に遺骨の行き先については、他の親族が強い関心を持っていることも多いものです。頻繁にお墓参りに来ている親族はもちろんですが、そうでない場合でも内心では想いを抱えている場合もあるのです。出来る限り時間をかけてお互いに納得できるように擦り合わせを行うようにしましょう。

離檀料

お寺の墓地などにある墓を墓じまいする際には、先に述べた通り「離檀料」が必要となります。お寺から法外な離檀料を要求されるトラブルをネット上で見かけることがありますが、そのような例は実際にはそう多くはありません。

離檀料はお布施の一種で、お布施は「気持ち」で明確な「価格設定」がされていないのがトラブルの元となっています。個人的には、宗教的行為への謝礼、お布施という曖昧な取扱いではなく、一定の供養サービスへの対価と位置付けた方が明確だとは思うのですが、現実には「お布施」として慣習に従って納められているものです。したがって、基本的には慣習に従うというのがトラブルを回避する道です。もっとも「慣習」も不明確であることが多いものです。

一番なのは、お寺との率直な話し合いを経ることで、そのためには早い段階でお寺に墓じまいの相談をすることでしょう。お墓を守っていただいてきたお寺への感謝を忘れない姿勢で、率直に墓じまいをする事情などを伝えれば、お寺側もスムーズな墓じまいに協力してくれるでしょう。

万が一、法外な離檀料を請求されるようなことがあっても支払う必要はありません。高い離檀料を払わなければ墓じまいをさせないことに法的な根拠はありません。トラブルは気持ちの良いものではありませんが、義務のない支払いをする必要はないのです。通常相場は、閉眼供養のお布施などを合わせたトータルで30万円以下程度だと考えて良いでしょう。

墓石の不適切処理

お墓を撤去した後の墓石は、いわゆる産業廃棄物として扱われます。時々、撤去された墓石が不法に野積みされている光景などがテレビで放映されることもありますが、きちんとした石材店に依頼しないと、ご自分の家の墓石が産廃としてその辺に転がっている、ということにもなり兼ねません。

墓石の撤去などを依頼する石材店が産業廃棄物処理についてきちんとした処理方法を採っているのかどうか、依頼前にしっかり確認するようにしましょう。産業廃棄物収集運搬業の許可業者となっているのかどうか、産業廃棄物管理票(マニフェスト)の作成を行っているのかどうかを尋ねてみれば良いでしょう。

まとめ

墓じまいを行う際にもっとも留意すべき点は、お墓に関係する親族、現在のお墓のあるお寺などとの話し合いを早めに始めて、理解を得ながら進めていくことです。お墓には多くの人の感情が関わっていることが多いものなのです。

ネット上などで見られる「離檀料トラブル」事例などを見て、墓じまい代行業者に依頼する方も増えています。それもひとつの方法でしょう。ただ、役所への届け出や業者の手配など、いくつかのすべきことはあるものの、周囲の感情に配慮しながらひとつずつステップを踏んでいけば墓じまいは難しいことではありません。

故人への想いや、お世話になった人々への想いを大切にしながら、冷静にスムーズに墓じまいを行うことは、故人への一番の供養になるのかもしれません。

 

誰もが安価に選択できる葬送の方法を模索中です。また法律・条例や社会的ルールが向かうべき方向についても日々勉強しています。