散骨の法律や条例の知識 ~散骨時の注意点やマナーを知るために~(詳細版・随時更新)

散骨は今や多くの人が知る葬送の方法となっています。しかし一方で、散骨に関して明確に定めた法律はいまだに存在しないため、どのような方法で行えば問題がないのかについて明文化された手がかりはありません。散骨について明確に「こうすれば合法」「こうすれば違法」といった基準が明示されているわけではないのです。したがって、ルール違反にならない散骨の仕方について事前に理解しておくことが必要となります。そこで、散骨に関連する法律についての知識を解説し、各自治体が個別に行っている条例による規制についても説明していきましょう。

※この記事の内容は詳細にわたっており長文です。お急ぎの方は概要をまとめた次の別記事をご覧いただければと思います。
散骨は合法か違法かについての整理(簡易版)
散骨に関する条例の規制一覧表(簡易版)
散骨をする際にはなぜ遺骨を細かく粉骨する必要があるのか。

尚、この記事には条例の情報などを掲載していますが、条例等は各自治体によって随時追加されていく可能性があります。したがって、当記事も自治体の動きなどに応じて随時更新していくつもりです。

海洋散骨の花の写真

散骨は「節度をもって行われる限り」違法ではない

散骨が問題になるのは、主に刑法と墓埋法との関係です。

刑法との関係

散骨についてまず問題になるのは、「刑法」1との関係、つまり散骨を行うことが犯罪にならないかという点です。これについて問題になるのは、刑法190条に定める死体損壊等の罪です。

刑法
第百九十条 死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、三年以下の懲役に処する。

刑法が犯罪を定めそれに該当する行為を処罰しているのは、それによって保護すべき利益(保護法益)があるからです。たとえば、殺人罪の保護法益は人の生命ですし、名誉棄損罪の保護法益は人の名誉です。では、死体損壊罪の保護法益は何でしょうか。死体や遺骨などについて極端にクールに考えればそれに財産的な価値があるわけではありませんし、既に亡くなっている人の安全や感情を考慮する必要もないからです。それでも、刑法が死体や遺骨を遺棄することを禁じているのは「社会秩序としての一般的な宗教感情や死者に対する敬虔感情」を保護法益としているのだと考えられています2

「社会秩序としての一般的な宗教感情や死者に対する敬虔感情」というのは難しい表現ですが、あえて簡単な言い方をすれば、国民が遺体や死者に対して一般的に感じる厳かな気持ちを守るといったとこでしょうか。死体にはもう命はなく財産的な価値がないとしても、社会通念に反するような粗末な扱い方を許せば、一般国民の感情は害され、ひいては社会の秩序は維持できなくなるといったところです3

散骨を行う人は、普通、遺骨を粗末に扱うつもりなどなく、むしろ故人の意思を尊重したり、故人への想いから遺骨を海や山に撒きます。ただ、散骨の仕方によってはそれを不愉快に思う人がいるかも知れません。もちろん、ほんの一部の人が不愉快だということが問題なのではなく、国民の多数が不愉快に感じるようなやり方、つまり社会通念に照らして適当でないようなやり方をすれば、「社会秩序としての一般的な宗教感情や死者に対する敬虔感情」を害することになってしまうかもしれないということです。

遺体を火葬して焼骨をお墓に納骨するというやり方は、社会通念上適切な遺体の取扱いとして認められています。一方、散骨についての国民の認知度は上がっているものの、いまだに一般的な葬法として国民の間で確固たる位置を占めるには至っていません。したがって、散骨のやり方によっては、死体損壊罪(遺骨遺棄罪)に該当する可能性が皆無ではないといえるのです。

この点について参考になるのは、非公式ながら存在する法務省の見解です。1991年に法務省刑事局は「葬送のための祭祀として節度をもって行えば違法ではない」との見解を示したといわれています4。この「節度をもって」という部分が重要で、死体損壊罪(遺骨遺棄罪)の保護法益からすれば、「社会秩序としての一般的な宗教感情や死者に対する敬虔感情」を害しないようなやり方であることが「節度をもって」という意味だと考えらえれます。「節度をもって」行えば散骨が死体損壊罪(遺骨遺棄罪)に該当することはない一方、節度のないやり方だと犯罪になる可能性も皆無ではないということです。具体的にどのようにすれば「節度をもって」といえるのかについては、後述しましょう。

墓埋法との関係

「墓地、埋葬等に関する法律」(墓埋法)5は、火葬や埋葬の方法、火葬場や納骨堂などの設置に関して規制をしている法律です。これに違反する行為は処罰の対象となり、罰金・拘留・科料などが科されます。墓埋法の制定目的は下記のように定められています。

墓地、埋葬等に関する法律
第一条 この法律は、墓地、納骨堂又は火葬場の管理及び埋葬等が、国民の宗教的感情に適合し、且つ公衆衛生その他公共の福祉の見地から、支障なく行われることを目的とする。

ここにも「国民の宗教的感情」という言葉が出てきますが、この法律は公衆衛生上の目的を主なものとしています。墓埋法には散骨について定めた規定はありません。また、厚生労働省も非公式ながら、法律制定当時には散骨という葬法は想定されていないとして「墓地、埋葬等に関する法律」が散骨などの自然葬を禁じている訳ではない旨の見解を示したといわれています4

したがって、法の趣旨にしたがって公衆衛生を害しないやり方で行う限り、散骨が「墓地、埋葬等に関する法律」に違反することはないといえるでしょう。逆に、公衆衛生を害するやり方で散骨をすれば、墓埋法に違反して処罰の対象となる可能性も皆無ではないということです。

ここでも散骨をどのように行えば墓埋法に違反しないことになるのか、具体的に考える必要があります。

葬送としての節度をもち公衆衛生を害さない散骨の方法とは

ここまで見てきたように、散骨の法律的な位置づけは明確なものではありません。散骨を行う人は増加しており、散骨という行為が既成事実化している一方で、法整備は追いついていないというのが現実です。公的機関の公式な見解がないため、厳密にいえば、散骨は合法とも違法ともいえない、宙ぶらりんの状況だということになります。

このような状況の下で、散骨を取り扱う業者は散骨の合法性についてそれぞれ微妙に異なる表現をしています。「散骨は合法」と明言している業者もあれば、「散骨の合法性はグレーゾーンにある」としている業者もあります。中には、「自社のやり方であれば合法だが、よくわからないで勝手にやると危険」といった表現をしていることろも見受けられ、読む人は少し怖くなってしまうことがあるかもしれません。

これらに対し、当サイトの見解は遺骨の取扱いや埋葬に関する法規制の趣旨に適合した社会通念上問題のない方法で行う限り、散骨が違法になることはないというものです。実際に散骨は数多く行われ、高価な散骨クルーズのようなサービスも行われていますが、これに対して取締りが行われているようなことはありません。公的機関は積極的に散骨を合法として扱うことはしていません(前述の通り、法務省や厚生労働省は散骨について「正式な」見解を表明してはいません)が、現実にトラブルが生じない限りは積極的に違法として取り締まるつもりもないと理解して良いでしょう。

散骨への国民の認知度が上がってきている中で、本来なら立法によって散骨の法的な位置づけを明確にし、社会秩序や国民感情に合致した散骨の方法が明示されることが好ましいでしょう。しかし、その方向への道筋はいまだはっきりとはしていません。そこには、どのような葬法を採るかは個人の自由であり安易な規制は適当ではないという考え方も一方であるでしょう。そのような狭間の中でグレーな状態が続いていますが、今現在散骨を望まれる方がおられ時間は有限であることを考えれば、個人で散骨を行う場合でも問題の生じないやり方の基準が必要です。

現在、多くの散骨業者や業界団体などは散骨を行う際に守るべきガイドラインを示しており、それにしたがって散骨を行っているのが通常です。散骨をめぐっては、刑法や墓埋法による処罰の例は聞いたことがありませんが、散骨場所周辺の住民や地権者、漁業権者などとのトラブルが発生したこともあります。刑事罰の問題にまでは発展しないまでも民事的な損害賠償問題に発展したこともあります。そのため、これらの事例を踏まえて多くの業者がトラブルを避けて散骨を行うようになっています。ガイドラインは業者によって微妙に異なりますが、おおむね共通している事項と、刑法や墓埋法の趣旨に照らして問題が生じないことを考慮して基準を示せば以下の通りとなります。

散骨を行う際の注意点 – 概略

まずは、散骨を行う際に注意すべき点の概略を見ていきましょう。

注意点 内容
1. 散骨する遺骨の形状について 遺骨の1片が2ミリメートル以下になるまで粉砕すること。
2. 散骨場所の選び方について ・承諾なく他人が権利を有する土地で散骨しない。
・河川や湖沼など水源となる可能性のある場所で散骨しない。
・住居・海水浴場・観光地・漁業権などに影響のない沖合で散骨すること。
3. 埋葬行為にあたらないようにする 墓地以外の場所で遺骨に土などをかけて埋葬することは違法。
4. 葬送の方法として行う 葬送の目的をもって常識的な方法で行うこと。
5. 周囲の人々の感情への配慮 葬儀場として認知されていない場所である以上、服装や儀式などは周囲の人々に十分配慮する。
6. 自然環境への配慮 ・自然にかえらない物は撒かないこと。
・遺骨に含まれる六価クロムによる環境汚染に注意する。
7. 自治体の条例に注意を払う 各自治体が行っている条例による独自の規制の存在に注意する。

散骨を行う際の注意点 – 詳細

散骨を行う際の注意点について、項目ごとに細かく説明していきます。

散骨の注意点1 – 遺骨を細かく粉砕すること

焼骨をそのまま散骨すると、散骨の様子や散骨後の遺骨を見た人が、散骨をしたのか遺骨を遺棄したのかの区別をつけることができません。そのため、一般国民の宗教感情や死者への敬虔感情を害する恐れがあります。また、遺骨遺棄だと勘違いされると事件化してしまう恐れがあります。

したがって、遺骨だとわからないレベルにまで遺骨を粉砕した上で散骨することが必要です。その程度に関する法規制があるわけではありませんが、一般に遺骨の一片が2ミリメートル以下になるまで粉骨すれば問題になることはありません。

散骨の注意点2 – 散骨場所の選び方

権利者の明確な承諾がない限り、他人が所有権などの権利を有する土地(国有地等を含む)で散骨を行ってはいけません。また、自分の所有する土地や権利者の承諾を得ている場合であっても、他人の土地と近接していたり、河川や地下水などに影響を及ぼすおそれがある場所での散骨はするべきではありません。また、散骨場所となった土地を後々売却することになった場合には、散骨の事実が判明すれば財産的価値が下がってしまう可能性についても考えておく必要があります。

河川や湖沼などは飲料水や農業用水その他の水源となっていることも多く、それを利用する人々の感情に配慮して散骨を行わないようにします。また同様に、海への散骨であっても、海岸や浜辺、防波堤などからの散骨は行うべきではありません。特に、漁業権が設定されている場所での散骨は、漁業者の心情を害するだけでなく海産物への風評被害等を懸念する声もあり、絶対に行わないようにします。

海での散骨は、住居や海水浴場、漁業権などに影響を及ぼす可能性がない程度に沿岸から十分な距離をとった沖合で行う必要があります。また、観光船の航行ルート上なども避けなければなりません。

以上をまとめると下記のようになります。

場所 散骨の可否
地上 自己所有の土地 可能。
ただし、近隣住民への配慮は必要。
また、転売可能性がある場合は財産的価値の低下に注意。
他人所有または他人の権利が存する土地 不可。
ただし、権利者の明確な承諾がある場合は可能。
その場合も近隣住民への配慮は必要。
河川・湖沼 不可。
海上 沿岸部 不可。
漁業権のある海域 不可。
海水浴場・観光船航行ルートの近隣 不可。
上記以外で沿岸から十分な距離のある沖合 可能。

散骨の注意点3 – 埋葬をしていけない

地上で散骨をする場合、粉骨した遺骨を撒くだけにとどめます。穴を掘って埋めることや、墓標になるようなものを設置すると「墓地、埋葬等に関する法律」に違反することになります。いわゆる埋葬は墓地として認められている土地でだけ行うことができるものなのです。

近時は樹木の根元に遺骨を埋葬する樹木葬も広がりを見せており、各霊園や墓地でも行われるようになっていますが、これは墓地として認められている場所だからこそできるものです。墓地ではない場所に、樹木葬を真似て木の根元に穴を掘って遺骨を埋めたり、撒いた遺骨に土をかけたりすることは違法だということを知っておきましょう。自分の土地であっても違法です。6

権利上問題のない土地に散骨する場合は、粉骨された遺骨を地上に撒くだけにとどめます。埋めなくても、遺骨は短時間で土と見分けがつかなくなるほど自然にかえっていくものです。

散骨の注意点4 – 葬送の方法として行うこと

法務省の非公式見解である「葬送のための祭祀として節度をもって行えば」という部分と関わることですが、「葬送のための祭祀」というのも個人によって考え方は異なります。従来のお葬式と同様に厳かな雰囲気で葬送を行いたい人もいれば、明るい雰囲気で見送りたい(見送って欲しい)場合もあるでしょう。問題は「一般的な宗教感情や死者に対する敬虔感情」に配慮した一定の常識の範囲内での散骨を行うということです。ご自分、ご家族なりに葬送として行うということが明確になっており、一般常識として他の人の死者を敬う気持ちを害さないような方法で行えば問題ありません。

散骨の注意点5 – 周囲の人々の感情に配慮すること

葬儀場やお寺などはそもそも葬送を行う場所として国民に認知されているので、そこで葬儀を行ったからといって文句を言う人はいません。一方、山や海などで葬送を行うことに対して、すべての国民が寛容であるといえる状況ではありません。したがって、一般的に葬送を行う場所だと認知されていない場所で散骨を行う場合には、周囲の人々の感情に影響を与えない方法を選択すべきです。

具体的には、喪服の着用は控える、周囲に聞こえるようにお経をあげたり線香をそなえたりしないなどの配慮が必要です。散骨のためにぞろぞろと喪服姿の人たちが乗船する様子を、同じマリーナを使う人の中には不愉快に思う人もいます。ご自分なりの葬送の儀式を行いたい場合は、周囲に他の人がいないことを確認して行うべきです。

散骨の注意点6 – 自然環境を害さないようにする

散骨をする際、一緒に花をたむけたり、お酒をあげたりすることは多いでしょう。それらが自然にかえるもので、量も抑えるのであれば自然環境に負荷がかかることはありません。しかし、ラッピングされた花、お酒の容器、遺骨を入れた容器などを山や海に一緒に撒くことは自然環境を害することになります。散骨する際には、これら自然にかえらないものを撒いてはいけません。きちんと持ち帰るようにします。また、花のようないずれ自然にかえるものであっても、多量になれば廃棄物と同じです。節度を守った量に抑えるようにしましょう。

粉砕された遺骨は細かいパウダー状となるため、特に海上での散骨の際には風に舞ってしまいます。風で遺骨が船に戻ったりすることのないよう、遺骨を封入した袋のまま散骨するのが一般的になっています。その際の袋は、水溶性の紙袋で水に濡れるとただちに溶け始めるものが自然環境にも遺骨にとってもよいものです。遺骨はすぐに海にかえり、袋も自然を害さないというわけです。

なお、遺骨には有害な六価クロムが含まれていることがあります。地上で同じ場所に散骨し続けると六価クロムの土壌での分解が追い付かず蓄積されていくこともありえます。沿岸から十分に距離のある海上での散骨では、遺骨はただちに拡散するため環境にただちに悪影響を与えることはありませんが、それでもやはり自然環境への配慮は必要でしょう。粉骨を行う業者によっては、ご遺族や自然環境への悪影響を避けるため、粉骨時に六価クロムの無害化処理をしているところもあります。そのような配慮をすることも必要でしょう(弊社の粉骨サービスでは、ご遺骨に含まれる六価クロムを試薬によって確認し、これが含まれる場合には無害化処理を必ず行うこととしています)。

散骨の注意点7 – 自治体の条例による規制に注意する

ここまで見てきたとおり、日本の法律には散骨について正面から定めているものはありません。しかし、地方自治体によっては、散骨について条例で直接の規制を行っている場合があります。「法の不知はこれを許さず」という法律に関することわざがあるように、条例の規制を知らなかったとしてもこれに違反することが許されるわけではありません。したがって、散骨をする前に、散骨場所が属する自治体に散骨に関する条例がないかどうかを確認する必要があります。これについては、後述しましょう。

補足 – ペットの遺骨について

ペットの遺骨は、刑法の死体損壊罪(遺骨遺棄罪)や墓埋法の規制対象ではありません。どんなに大切なペットの遺骨であっても、法律上は単なる一般の「物」と同じ扱いとなります。よって、ペットの遺骨を散骨する行為は法律上は物を遺棄するのと同じ扱いをされます。遺骨だからといって特別な扱いはされないのです。

したがって、ペットの遺骨を墓地以外の場所に埋葬したり散骨したりすることに法律上の問題はありません。もっとも、埋葬や散骨をする場所の権利関係や、周囲の人々の感情への配慮、自然環境を害さないようにすることなどはやはり必要です。

また、焼骨された遺骨は、ペットのものと人のものの区別ができない場合もあります。そのため、散骨する場合にはやはり粉骨をしてから行う方が問題が生じる可能性は低く、遺骨が自然にかえるのも早くなるのでおすすめだといえるでしょう。

散骨の条例による規制について

散骨に対する法律の規制はありませんが、いくつかの地方自治体では散骨に対する規制を条例などで独自に行っている場合もあります。これらの多くは、散骨場を設置した業者、設置しようとした業者に対する住民の対抗手段として制定されたものです。業者側の周辺への配慮が十分でなかったこともこれらの規制に強く影響しています。一方で、散骨への過剰な忌避感が条例に反映してしまっているものもあるように思えます。ただ、そこに住む住民の意思の反映として条例による規制が行われているのであり、その意思に従わなければならないことは言うまでもありません。

したがって、散骨を行う前には、散骨場所が条例の規制対象となっていないかどうかを確認しなければなりません。この記事では散骨に関する条例を列挙していますが、今後も条例による規制が増加していくことは大いにありえます。しかも、平成23年に成立した第2次地方分権一括法7では墓地の経営許可権限が県知事から市長へ移譲されています。新しい葬送方法に対して各市町村の条例が位置づけを明確にしていく動きは今後も増加していくでしょう。

条例で規制されていることを知らなくても、罰則などがある場合それを免れることはできません。ご自分で散骨する場合には、散骨前に必ず散骨場所のある地方自治体に対して規制の有無を確認しておいた方が良いでしょう。

散骨に関する規制を行う各自治体の条例概略

2017年12月現在で、散骨に関する規制条例を有する地方自治体は下記の通りです。多くは散骨場所を設置しようとする事業者に対する規制ですが、個人で行う散骨を規制している条例もあります。

自治体名 規制の対象となる主体 主な規制内容
長沼町(北海道) 個人
・散骨場事業者
・墓地以外の場所での散骨を禁止
・違反者への勧告
・散骨場を事業で行った場合の罰則
勧告に従わない場合の罰則
七飯町(北海道) ・散骨場事業者 ・散骨場設置に関する詳細な要件
・散骨場設置に対する町の許否裁量を強力に認める
岩見沢市(北海道) ・散骨場事業者
・一部個人
・散骨場設置に関する詳細な要件(施設・隣接自治体との距離など厳格なもの)
・散骨場以外での散骨の禁止
・違反事業者への罰則
・報告・検査拒否者への罰則
諏訪市(長野県) ・散骨場事業者 ・散骨場設置に関する詳細な要件(設置場所から200メートル以内の自治会の同意書など)
秩父市(埼玉県) 個人
・散骨場事業者
・墓地以外の場所での散骨を禁止
・例外的に散骨を市長が認める場合の要件を規定(隣地所有者の同意または隣地境界から100メートル以上離れているなど)
本庄市(埼玉県) ・散骨場事業者 ・散骨場設置に関する詳細な要件
・市長による使用禁止命令など
湯河原町(神奈川県) ・散骨場事業者 ・散骨場設置に関する詳細な要件( 隣地所有者の同意、住居地域との距離制限など)
御殿場市(静岡県) ・散骨場事業者 ・散骨場設置の詳細な許可基準
・無許可経営への罰則
熱海市(静岡県) ・散骨場事業者  ・散骨場設置の詳細な許可基準(近隣同意、施設等からの距離制限など)
・市長の禁止命令権限
伊東市(静岡県) ・散骨場事業者
・海洋散骨事業者
・散骨場など墓地に類似する施設の設置手続
・条例とは別に海洋散骨に関する指針で市内海岸10キロメートル以内の散骨自粛などを要請
三島市(静岡県) ・散骨場事業者 ・散骨場設置の詳細な許可基準
・改善命令や中止命令の権限
(※ 平成29年12月12日可決)

※ 2017年12月21日現在
散骨を行う場合は必ずご自身でも散骨場所のある自治体に規制の有無を問い合わせてください

散骨に関する規制を行う各自治体の条例詳細

長沼町(北海道)

北海道夕張郡長沼町では、平成17年に「長沼町さわやか環境づくり条例」8を制定して町内での散骨を規制しています。

この条例が制定されたきっかけとなったのが、とあるNPO法人が町内に樹木葬公園と呼ぶ散骨場を設置、分譲を行ったことに対する町民の強い反対でした。町や町民への十分な説明もないままに強行しようとしたことが町民の強い反発を招いた事例です。NPO法人側も樹木葬公園で焼骨を粉骨しないまま埋葬するかのような姿勢もあり、当初は墓地としての分譲を予定していたという話もありますが墓地としての申請は認められず、散骨への理解も不十分なまま事業を強行しようとしていた節もあります。住民からは、飲料水や家畜の飲み水への影響、農作物への風評被害などを心配する声が相次ぎました。

条例の第11条では「何人も、墓地以外の場所で焼骨を散布してはならない。」としています。「何人も」とあるように、事業者だけでなく個人も規制対象となっているところが特徴です。違反者には町長から勧告と行うことができ、勧告に従わない場合は命令を出すこともできます。命令に従わない場合は罰則も定められている強力なものです。また、散骨場を提供することを事業として行った場合の罰則は6月以下の懲役又は10万円以下の罰金という厳しいものとなっています。

この条例によれば、町民の中に散骨をしたいと思う人がいて、他人の土地などから十分に距離がある場所でひっそりと散骨を行うことも一切禁止されることになります。個人の自由という観点からは強力すぎる規制だという考えもあるでしょう。ただ、規制に至る経緯が上記のようなものだったことや、全国に事例がない中での規制だったことを考えると無理もなかった面はあろうかと思います。

七飯町(北海道)

北海道亀田郡七飯町は、平成18年に「七飯町の葬法に関する要綱」を定めて散骨を規制しています。「要綱」は条例や規則とは異なり、法令上の根拠はなく、自治体における基本的あるいは重要な内部事務の取扱いについて定めるもので、法的拘束力はなく、当然罰則などもありません。

この要綱では、「死体又は焼骨を土中に葬る、若しくは焼骨を収蔵する以外の葬法」を「法定外の葬法」と定めています。事業者が町内で「法定外の葬法」に関する事業を行おうとする場合、事業を行わないように町長が指導できる区域が細かく設定され、事業者は指導を遵守しなければならないと定められています。

たとえば、学校・病院・介護施設・身体障がい者施設・児童福祉施設・老人福祉施設などから110メートル以内の区域では「法定外の葬法」に関する事業は行えません。また、公園や交通の頻繁な道路、軌道、河川、公共施設や公共的施設、人家からも110メートル以上離れていなければならないとされています。この他にも水道水源に影響を及ぼすおそれのある区域から500メートル以内の区域、七飯町と隣接する他の市町との区域から500メートル以内の区域、自然公園等も同様です。さらに、「その他、町長が公衆衛生その他公共の福祉に著しい影響を与えると認める場所」という条項もあります。

さらに、事業者は説明会を実施して町内会会員の総意の承諾を得なければならないこと、町内会以外からも不特定多数の町民から反対がある場合は町長が事業者に対して町民の意思に従うよう指導できるともしています。

これら制限は、事業実施地に関しても、町民からの承諾を得る点に関しても、町の意向によっては町内全域で事業不可能となるような内容ともいえます。法的拘束力のない要綱であっても、このような状況の下で散骨場などの事業を強行することは事実上できないでしょう。したがって、七飯町内で散骨場に関する事業は行えないといっても良い状況だと思われます。

一方で、個人が行う散骨に関する規制は行われていません。

岩見沢市(北海道)

北海道岩見沢市は、平成19年に「岩見沢市における散骨の適正化に関する条例」9を定めています。その具体的規制内容は、「岩見沢市における散骨の適正化に関する条例施行規則」10に詳しく定められています。

その規制は主に散骨場を運営しようとする事業者に対するもので、たとえば、学校・病院・道路・公園・広場・貯水施設・森林公園・河川湖沼・軌道・公共施設・店舗・人家等からは500メートル以上離れていないければ散骨場を開設することはできません。他にも水源等に影響を及ぼすおそれがある場所や、隣接する市町村境界から500メートル以内の場所も同様です。それ以外にも「条例の目的を達成するために支障」がある場合には散骨場開設は認められないとされているため、広範な禁止であるといえるでしょう。無許可で散骨場を経営することに対しては、6月以下の懲役又は 100 万円以下の罰金の刑罰も用意されています。

これらからすれば、岩見沢市内で散骨場を経営することは事実上不可能であるといえるでしょう。

なお、条例の第7条では、「散骨は、散骨場以外の区域において、これを行ってはならない。」とされています。この文言からは、散骨場事業者に対するだけでなく、個人の散骨に対しても条例は禁止しているということになります。もっとも、事業者と異なり、個人が散骨を行うこと自体に対する罰則は設けられていません。

諏訪市(長野県)

長野県諏訪市は、平成18年に「諏訪市墓地等の経営の許可等に関する条例」11に「散骨場」への規制を加え、事業者の散骨場設置には市長の許可が必要なものとしています。

また、散骨場の設置場所については、道路・鉄度・起動・河川から50メートル以上、人家等ふくそう地12から200メートル以上離れていなければならず、高い土地で湿潤な場所を避けなけれなならない(高燥地)とされています。さらに飲用水が汚染されるおそれがない場所であることも必要です。

さらに散骨場開設の手続として、周辺自治体からの同意書を得ることが必要であることが「諏訪市墓地等の経営の許可等に関する条例施行規則」13に定められています。散骨場設置場所から周囲200メートル以内の自治会に対する説明会を開催し、自治会からの同意書を得なければならないというものです。

この条例・規則には罰則はありませんが、事業者が諏訪市内で散骨場を設置することは非常に難しいといえるでしょう。

一方、個人が散骨を行うこと自体についての規制は行われていません。個人の基本的人権尊重への配慮があったものだと考えられます。

秩父市(埼玉県)

埼玉県秩父市では、「秩父市環境保全条例」14によって散骨行為を規制しています。この条例は環境保全を目的としたものですが、平成20年の改正で第36条「何人も、墓地以外の場所で焼骨を散布してはならない。」という条文が追加され、市内での散骨は禁止されました。条例の第7章「焼骨の散布制限、ごみ等の投棄禁止及び飼犬のふん害等の防止」の中に定められており、ごみやふん害と同様に、環境を害するものとして散骨を位置付けているのが特徴です。

この条例では、市長が別に定める場合は散骨も許されることとなっています。「別に定める場合」は「秩父市環境保全条例施行規則」15の第23条に定められており、事業者が設置する散骨場ではないこと、あらかじめ隣地所有者からの同意を得ており、かつ隣地境界から100メートル以上離れていること、公衆衛生その他公共の福祉の見地から支障がないと認められる場合であることという要件を満たしていることが必要です。

この条例・規則には散骨に関する罰則はありませんが、上記の規制内容からすると、市内で事業者が散骨場を経営することは不可能であるといえるでしょう。一方、個人の散骨も禁止の対象とされていますが、規則の定める要件にあてはまれば散骨を行うことも不可能ではないと形式的にはいえます。ただ、「公衆衛生その他公共の福祉の見地から支障がない」という要件があるため、運用次第によっては事実上の全面禁止となる可能性もあります。秩父市のホームページでの説明でも、「秩父市内で焼骨を散布しようとするすべての人 」が規制対象となり「原則禁止」ということだけが説明されています。16

本庄市(埼玉県)

埼玉県本庄市は平成22年に施行された「本庄市散骨場の設置等の適正化に関する条例」17によって散骨場の設置などに関する規制を行っています。

散骨場の設置には市長の許可を得なければなりません。また、散骨場の敷地の境界から300メートル以内に居住または土地や建築物を所有する人に対する説明会の実施も義務付けています。

設置の許可基準も厳しいものです。まず散骨場設置者は、設置場所となる土地の所有者であって、その土地には所有権以外の権利が設定されていないことが必要とされています。また隣地所有者全員の同意を得ることも必要です。また、公園・学校・保育所・病院その他の公共施設、現に人の居住する建造物の敷地境界から300メートル以上離れていなければなりません。河川や湖沼からは100メートル以上離れていること、敷地の接道に関しても、幅員4メートル以上の道路に接していることが求められています。他にも隣地境界に目隠しを設置することを義務付けるなど、詳細かつ厳しい条件です。罰則は設けられていませんが、市長の使用禁止命令権限が設けられています。

このような規制内容からすれば、本庄市内において散骨場を設置することは事実上困難でしょう。

ただし、規制の対象は散骨場の設置を行おうとする事業者であり、この条例では個人が行う散骨については規定されていません。

湯河原町(神奈川県)

神奈川県足柄下郡湯河原町では、「湯河原町散骨場の経営の許可等に関する条例」18によって、散骨場の設置を町の許可制としています。詳細な基準は「湯河原町散骨場の経営の許可等に関する条例施行規則」19に定められています。

散骨事業者は、事業計画地の境界線から300メートル以内の土地所有者、現に人が居住・使用している家屋や施設の管理責任者に対して説明会を実施する義務があります。また、散骨場と境界を接するすべての土地所有者の同意を得ることも必要です。散骨場周辺の土地を散骨事業者自身が所有している場合には、その土地の隣地所有者からの同意も必要となります。

また、散骨場の土地は散骨事業者が所有しており、抵当権等が設定されていないことが必要です。また人が現に居住・使用している施設、観光資源・河川・公園・学校・保育園・病院その他の公共施設から300メートル以上離れていなけらえばなりません。また、事業主体についても暴力団関係者の排除等など詳細に定めています。

条例・規則には罰則規定はないものの、町の中止命令権限なども定めています。これらによって、町内で散骨場を設置経営することは事実上困難となっているといえるでしょう。

なお、この条例・規則では個人に関する散骨については定められていません。

御殿場市(静岡県)

静岡県御殿場市は平成21年に施行された「御殿場市散骨場の経営の許可等に関する条例」20および「御殿場市散骨場の経営の許可等に関する条例施行規則」21によって散骨事業の実施を市長の許可制としています。

許可基準としては、まず散骨場を設置する土地が散骨事業者の所有するものであり、地上権、抵当権、賃借権その他の権利が設定されていないことが必要です。また、事業計画地から300メートル以内の自治会に対する説明会も義務付けています。隣地所有者の同意も必要です。

また都市計画法第8条1項の用途地域22以外であること、用途地域から300メートル以上離れていることも必要です。また、公園・道路・河川・湖沼・井戸・公共施設・農地・店舗・事業所・人家・隣接する他の市町の境界からも300メートル以上離れていなければなりません。この他にも飲料水や公衆衛生の見地や災害対策上の見地からの制限もされています。

これらの厳しい設置基準に加え、市長の中止命令、無許可経営には6月以下の懲役又は50万円以下の罰金も科されるなど、散骨場経営に対しては非常に厳しい姿勢で臨んでいるものといえるでしょう。市長の許可を得て散骨場を経営することが絶対無理だとはいえませんが、このような要件のすべてを満たすことは容易ではなく、事実上困難であることは確かです。

尚、この条例・規則では個人の散骨行為に関する規制は行われていません。

熱海市(静岡県)

静岡県熱海市は、平成27年に「熱海市散骨場の経営の許可等に関する条例」23施行し、「熱海市海洋散骨事業ガイドライン」24も策定しました。

条例では、散骨場の設置について市長の許可制としています。許可を受けるためには、散骨場設置場所から300メートル以内に居住または建物を所有する人に対して事前説明会を実施しなければなりません。また、隣地所有者の同意も必要です。また、許可基準として、散骨場の土地が散骨事業者の所有であることや地上権、抵当権、賃借権その他の権利が設定されていないことも求められています。都市計画法第8条1項の用途地域外で、用途地域、道路、河川、公共施設、農地、店舗、事業所、人家等から110メートル以上から離れていることも要件です。これ以外にも飲料水や災害に対する配慮も求められています。罰則はありませんが、使用禁止命令権限を定めるなど厳格な内容となっています。

一方、海洋散骨事業に関するガイドラインは、次のような事業者の責務を定めています。まず、場所に関しては、初島を含む熱海市内の土地から10キロメートル以上離れた海域で散骨を行うことを求めています。また、時期に関しては、海水浴やマリンレジャーの客が多い夏期機関の散骨を控えるように要請しています。さらに、焼骨はパウダー状にすること、飛散防止のために水溶性の袋に入れて行うこと、自然に還らないものを撒かないことなど、散骨の方法についても定めています。さらに、「熱海沖」、「初島沖」など、「熱海」を連想させるような文言を使った宣伝・広報を行わないように求めています。これらは、観光地としての熱海ブランドを毀損させないことを主な目的としているものです。ガイドラインは海洋散骨を行う事業者に対するもので個人を対象にはしていません。また、ガイドラインには法的拘束力もありません。しかし、このガイドラインを遵守しない事業者が熱海周辺で海洋散骨を実施することは事実上困難であるといえるでしょう。

熱海市におけるこのような条例やガイドライン策定の動きは、特定の民間業者による散骨場の建設計画がきっかけになって加速したものですが、海に面した自治体にとっては同様の問題を抱える可能性は否定できません。熱海市の姿勢は、観光資源を抱える自治体の観光ブランド保護の要請と散骨とが対立しかねないものであることを示しています。

伊東市(静岡県)

静岡県伊東市平成27年に「伊東市散骨場等の経営の許可等に関する条例」25を制定、翌平成28年には「伊東市における海洋散骨に係る指針」26を策定しています。

条例では、散骨場等の設置は市長の許可制とし、事業経営者の欠格事由や事前説明会の開催、隣地土地所有者等の同意等の手続を定めています。罰則はありませんが、市長の使用禁止命令等の権限や、命令に従わない事業者名の公表などが行えるものとしています。

一方、海洋散骨に関する指針では、海洋散骨を行う事業者に対し、散骨時に守るべき事項を要請しています。伊東市内の陸地から6海里(約11.11キロメートル)以内の海域での散骨を行わないこと、自然に還らない金属、ビニール、プラスチック、ガラスその他の人工物を撒かないことなどです。また「伊東沖」、「伊東市の地名」など、「伊東」を連想させる文言を使用した宣伝・広報を行わないことも求めています。条例とは違って従わない場合に事業者名の公表などはできませんが、この指針によって観光業者や漁業者とのトラブルを防ぎ、伊東ブランドを守ろうとする指針です。

なお、条例・指針ともに個人が行う散骨についての規制は行われていません。

三島市(静岡県)

静岡県三島市では、平成29年12月12日に「三島市散骨場の経営等の許可等に関する条例案」27を可決しました。

その内容は、散骨場の経営には市長の許可を必要とし、市長との事前協議や周辺関係者に対する説明会の開催を事業者に義務付けるというものです。また隣接所有者の同意も要件です。市長には中止命令等の権限もあります。

この条例では、市長の命令に違反した事業者名の公表が行えることになっているほか、無許可での散骨場経営には6 月以下の懲役又は50万円以下の罰金が科されることにもなっています。

なお、条例において個人が行う散骨についての規制は行われていません。

今後も条例による散骨規制は増加する可能性

散骨に関する法的な位置付けが不明確な中、現実に民間事業者による散骨場設置の動きがあった自治体では、その後を追うように条例での規制に乗り出しています。このような条例を持つ自治体は現時点では数えるほどしかなく、各自治体も試行錯誤しながらルール作りを行っている様子がうかがえます。

傾向としては、個人で行う散骨まで禁止する自治体は一部であり、近時は散骨場を設置しようとする事業者や海洋散骨業者に対する規制が主流です。また、事業者の違反に対して罰則を設けるかどうかは自治体によって判断が分かれています。もっとも、罰則の有無にかかわらず、散骨場許可の基準や手続きは各自治体ともに厳しいものとなっており、条例のある自治体で事業として散骨場を運営することは事実上不可能に近いでしょう。

地上での散骨に関しては、人々の感情だけでなく衛生上、環境保全上の問題が指摘されることも多く、農作物等への風評被害への懸念も強い傾向にあります。また、海洋散骨では十分な沖合で行うこと、環境への配慮、観光地ブランドへの影響に十分配慮して行わなければならないというのが、指針などを設ける自治体の判断です。INORI(いのり)の実施する海洋散骨代行サービスは現在条例による規制のない地域で行っておりますが、さらに規制を行っている自治体の判断を参考にしつつ、それ以上に厳しいガイドラインの下で散骨を行っています。

個人で散骨される場合にも、まず散骨実施場所の自治体に規制がないかを直接問い合わせてみることをおすすめします。条例は今後とも増えていく傾向にあると考えられるため、webで情報を確認するだけでは最新の状況を見落としてしまう可能性もあるからです。

節度のある方法で散骨を行うことが重要

現在、散骨という葬法の法律的位置づけはあいまいです。厳密にいえば合法でも違法でもないとしか言えません。しかし、法務省や厚生労働省の姿勢、条例規制を行っている自治体の試行錯誤の過程などを見ると、一部を除いて個人として行う散骨に対しては比較的寛容な姿勢で臨もうという面も見受けられます。一方で、営利事業として行う散骨場の経営などについては、厳しい目が向けられている傾向にあるといえるでしょう。

刑法や墓埋法の趣旨に反しない方法であり、他人に迷惑をかけないのであれば、個人の自由として散骨という葬法を選ぶことができます。一方で、法の位置づけが曖昧であることを利用して、無秩序でルール無用の散骨を行うことが増えていくとすれば、散骨を行う自由が厳しく制限されていく可能性も否定できません。社会の変化に伴い、従来型のお墓を個人で維持していくことの難しさが増している中、個人の自由として簡素な散骨を選ぶ権利があることは大切なことだとINORI(いのり)は考えています。そのためには、事業者として上記に挙げたような散骨時のルールを厳守するのはもちろん、散骨に関するルールやマナーを広く知らせていく努力もしていこうと思います。

個人で散骨をする際は、ぜひこの記事で示した「散骨を行う際の注意点」を守っていただくようお願いいたします。また、弊社に散骨をお任せいただける場合は(参照:海洋散骨代行サービス内容・料金・ご利用方法)、法律・条例、人々の感情、自然保護などに十分配慮して散骨を行うことをお約束いたします。

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  1. 刑法【電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ】 
  2. 大塚 仁/河上和雄/中山善房/古田佑紀 編『大コンメンタール刑法〔第三版〕第9巻 第174条~第192条』(青林書院)217頁 
  3. なお「宗教感情」といっても、刑法が特定の宗教・宗派の活動を保護しようとするものではありません。日本国憲法は20条で信教の自由を定めているため、刑法が特定の宗教や宗派を保護するようなものであってはならないからです。あくまでも社会通念として、死者をきちんと葬るべきだとか、死者には敬虔な気持ちで接するべきだといった考え方を保護しているのだという意味です。 
  4. これらの見解は非公式のものなので正式な形で文書は存在していません。
    ただし参考になるのは下記のものです。
    第6回「これからの墓地等の在り方を考える懇談会」議事要旨【厚生労働省】
    この議事要旨において「葬送の自由をすすめる会」からのヒアリング内容として法務省や厚生労働省の見解が示されており、それらの見解が存在することを前提に会と委員のやりとりが行われています。 
  5. 墓地、埋葬等に関する法律【電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ】 
  6. この点については不可思議に思う人がおられるかもしれません。遺体をそのまま埋葬してしまうのならともかく、焼骨を土中に埋葬したからといって公衆衛生上の問題が生じる可能性はなく、むしろ土をかぶせた方が外から焼骨が見えなくなって、国民の宗教感情において妥当なように思えるからです。しかし、厚生労働省は「樹木葬森林公園に対する墓地、埋葬等に関する法律の適用について」(平成16年10月22日 健衛発第1022001号)において、地面に穴を掘りその穴に焼骨を入れて樹木の苗を植えることや、その上から土や落ち葉などをかけることは墓埋法の「焼骨の埋蔵」にあたるとする見解を示しています。首をひねりたくなる部分がなくはありませんが、公的機関がこのような見解を有している中においては、これに従うしかないでしょう。 
  7. 平成23年8月26日成立「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」(平成23年法律第105号)(第2次一括法)【内閣府ホームページ】 
  8. 長沼町さわやか環境づくり条例【北海道長沼町[まおいネット]】 
  9. 岩見沢市における散骨の適正化に関する条例【岩見沢市オフィシャルサイト】 
  10. 岩見沢市における散骨の適正化に関する条例施行規則【岩見沢市オフィシャルサイト】 
  11. 諏訪市墓地等の経営の許可等に関する条例【諏訪市】 
  12. 「ふくそう」とは、物事が一箇所に集中していることを意味します。「ふくそう地」とは建物や施設、交通などが集中しているような場所を指すと思われます。 
  13. 諏訪市墓地等の経営の許可等に関する条例施行規則【諏訪市】 
  14. 秩父市環境保全条例【Reiki-Base インターネット版】 
  15. 秩父市環境保全条例施行規則【Reiki-Base インターネット版】 
  16. 散骨行為の規制について【秩父市】 
  17. 本庄市散骨場の設置等の適正化に関する条例【Reiki-Base インターネット版】 
  18. 湯河原町散骨場の経営の許可等に関する条例【Reiki-Base インターネット版】 
  19. 湯河原町散骨場の経営の許可等に関する条例施行規則【Reiki-Base インターネット版】 
  20. 御殿場市散骨場の経営の許可等に関する条例【Reiki-Base 検索システム】 
  21. 御殿場市散骨場の経営の許可等に関する条例施行規則【Reiki-Base 検索システム】 
  22. 都市計画法の用途地域は、第一種住居地域や商業地域などの用途を指定された地域を指し、市街化地域と呼ばれる地域で指定されているものです。非常に大まかにいうと都市や住宅の開発を予定しているような地域ではほとんど用途地域の指定がされています。 
  23. 熱海市散骨場の経営の許可等に関する条例【ようこそ熱海市へ】 
  24. 熱海市海洋散骨事業ガイドライン【ようこそ熱海市へ】 
  25. 平成27年12月に可決された条例の条文がweb上で見つけられなかったため、条例案文へのリンクをはっておきます。
    伊東市散骨場等の経営の許可等に関する条例(案)【伊東市】 
  26. 伊東市における海洋散骨に係る指針【伊東市】 
  27. 議第71号 三島市散骨場の経営等の許可等に関する条例案【三島市公式Webサイト】