散骨時に遺骨を細かく粉骨する必要があるのはなぜなのか。

散骨を行う際には、事前に遺骨を細かく粉砕(粉骨)しておくことが必要だといわれます。焼骨されただけの遺骨の状態で散骨することは一般に認められないものと考えられているのです。それはなぜなのでしょうか。

粉骨後の様子(ダミー)の写真です

この写真はご遺骨の実物ではありません。ご遺骨ではない他の硬い物を通常の粉骨作業と同様にパウダー状に加工したものんをダミーとして掲載しています。

遺骨の1片が2ミリメートル以下になるまで粉骨すること

散骨する前の準備としては、遺骨の1片が2ミリメートル以下になるまで粉砕することが必要だといわれています。

もっとも、これは国などが定めた一般的な基準というわけではなく、「一般的に」守るべき基準といわれているものです。「一般的に」というのは、散骨業者の団体のガイドラインや散骨代行業者などが推奨しているものだと考えていただければと思います。

葬儀会社や海洋散骨をコーディネートする場合や、散骨代行業者が散骨を行う場合、これらの会社が粉骨も請け負うことが多く、その場合も1片2ミリメートル以下まで粉骨するということは、ほとんどの場合守られています。2ミリメートル以下どころか、非常に細かいパウダー状にまで粉骨する業者もいます(弊社もそのようにしています)。

このように細かく粉骨することの意味は、大きく分けて2つあります。

法に反しない散骨を行うために粉骨する

散骨前に遺骨を細かく粉骨することの第1の理由は、法律との関係で違法とならない、または違法だと誤認されないようにする必要があるからです。

刑法190条は、死体損壊罪の一種として「遺骨遺棄罪」を定めています1。焼骨をそのまま撒く行為は、外形的には遺骨遺棄の行為との判別は難しいものです。また、焼骨を撒いてしまうと、その後それを発見した人には遺棄された遺骨に見えてしまう場合もあるでしょう。山中に撒く場合はもちろんのこと、海に撒いた場合でも岸に流れ着けば同じような問題が起こります。

そこで、焼骨を細かく粉砕し、撒いた後は容易に遺骨とはわからないようにすることが必要だと考えられるようになりました。

これは、非公式ながら法務省が出した「葬送のための祭祀として節度をもって行えば違法ではない」という見解を参考に、何が「節度をもって」といえるのかが検討された結果、たどり着いた結論です。

遺骨遺棄罪(死体損壊罪)は「社会秩序としての一般的な宗教感情や死者に対する敬虔感情」を保護するものとされています2。遺族にとっては大切な遺骨でも、他人から見たらあまり目にしたくないものであることも大いにあります。一見して遺骨だとわかる形状のままこれを撒くことは許されないと考えるのが妥当でしょう。

早く自然に還す方法として粉骨する

粉骨をするもう1つの理由は、遺骨を早く自然に還すため、というものです。

たとえば、土の上に散骨する場合、焼骨のままではなかなか土になじまず、土の一部となるまでに時間がかかります。かといって遺骨に土をかけることは、「墓地、埋葬等に関する法律」(墓埋法)の「埋葬」にあたるため、墓地以外の場所では許されません3。これに対し、細かく粉骨した上で散骨すれば、遺骨は短い期間で土の一部となります。

また、海で散骨する場合も、細かく粉骨された遺骨は、散骨と同時に水中に拡散していきます。散骨されることによって海の一部となるということが実感できる瞬間です。また、焼骨には自然環境に有害な六価クロムが含まれていることがありますが、粉骨されていれば広範に希釈されます(弊社ではご遺骨に六価クロムが含まれていないか検査試薬で確認をし、含まれている場合には標準で六価クロム無害化処理を行っています)。

このように、散骨を望まれた故人のお気持ちは「自然に還る」というものですから、早く自然に還っていける粉骨は、故人の遺志にも沿うものといえるでしょう。

 


  1. 刑法【電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ】 
  2. 大塚 仁/河上和雄/中山善房/古田佑紀 編『大コンメンタール刑法〔第三版〕第9巻 第174条~第192条』(青林書院)217頁 
  3. 墓地、埋葬等に関する法律【電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ】