埼玉県内初、樹木葬に特化した越生町の公営墓苑は2019年5月開設。町民以外も利用可。

埼玉県内で初となる樹木葬・樹林葬に特化した公営墓苑が越生町に開設されます。運営開始は2019年5月。

埼玉県越生町は5月、樹木の下に遺骨を埋葬する樹木葬に特化した公営墓園を開設する。墓標となるツツジを植え、700区画を整備。周囲には合葬形式の樹林葬エリアも設ける。町民以外の利用も条件付きで認める。

埼玉県越生町、樹木葬特化の墓園 5月開設 :日本経済新聞

越生町は地理的には埼玉県のほぼ中央に位置し、越生駅は八高線の駅です。自然豊かな町で、関東三大梅林の一つである越生梅林は有名ですが、他にも黒山三滝、五大尊つつじ公園、山吹の里歴史公園などもあり、花や自然を満喫することができます。

この樹木葬・樹林葬に特化した霊園の名称は越生町営樹木葬墓苑。通称は五大尊花木墓苑とされています。町内には五大尊つつじ公園があり季節には樹齢300年を超えるものも含めつつじでいっぱいになりますが、その五大尊から名前をいただいているのですね。

つつじの写真

樹木葬とは、墓石などを設けず、墓碑として樹木を植える形式のお墓に納骨する方法です。これに対して樹林葬は1本または複数の樹木をシンボルとして、地中に家族ではない複数の遺骨を合葬・合祀する形式の方法です。樹木葬・樹林葬の区別は厳密なものではありませんが、一般的には、墓石の代わりに花木をシンボルにするものを樹木葬、樹木・樹林をシンボルとして合葬するものを樹林葬と呼ぶことが多くなっています。

越生町の五大尊花木墓苑では、樹木葬の区画は700区画整備され、その周囲に樹木葬として1000体を合葬できるように整備されます。

町民は当然使用する権利がありますが、町民以外でも、1万円以上のふるさと納税を行って「越生町ふるさと住民票」を取得した者であれば、使用権を得ることができます。墓苑の使用料は、町民の場合樹木葬1区画15万円(2体目以降は7万5千円)、樹林葬5万円となっています(ただし、埋蔵にかかる実費が別途必要)。町民以外で使用権を得た人の場合は、町民の使用量の2倍の金額となっています。いずれも生前申込みが可能です。また、埋蔵から30年間は町が責任を持って管理するとされています。

参照: 町営樹木葬墓苑のご案内/越生町ホームページ

このような樹木葬・樹林葬墓苑は、東京都立小平霊園や横浜市営メモリアルグリーンなどが既にありますがニーズは年々高まる傾向にあります。その理由の1つは自然環境の中に溶け込み共生するタイプの墓苑が現代人の価値観に合っていることですが、もう1つ重要なのは墓の維持管理、承継者の問題など少子高齢化・多死社会によるニーズの大きな変化によるものです。後者の観点では、樹木葬よりも合葬形式の樹林葬の方がよりニーズに応えているとも言えますが、合葬に対して抵抗を感じる方もおられるのでしょうね。

樹木葬や樹林葬に関しては、1度納骨すると遺骨を返してもらうことはできず改葬もできない点に注意が必要ですが、自然に還るという樹木葬・樹林葬の意味合いからすれば当然のことともいえるでしょう。

私個人としては、地方自治体が合葬墓の整備を推進することには賛成です(参照: 自治体は合葬墓の整備を推進すべき )。そういう意味では越生町が樹林葬区画を整備することはとても良いことだと思います。江戸時代以降の檀家制度の下で一般化した家ごとに墓石を設けて納骨するという葬送のあり方は決して普遍的なものではなく、葬送の形も時代に合わせて変化していくべきものだと考えます。自然に還ることができ、安価で誰でも利用できる葬送の方式が、人々の価値観の中においても一般化していけば良いなと思います。