横須賀市が終活情報登録伝達事業(通称:わたしの終活登録)を開始。終活ノート保管場所・墓所在地を死後開示して本人希望を実現。

横須賀市は2018年4月17日の市長記者会見で、就活情報登録伝達事業(通称:わたしの終活登録)を2018年5月1日から開始することを発表しました 1

横須賀ヴェルニー公園の写真

近時は、近親者がいなかったり、近親者がいても日常的な交流のない高齢者も増えています。こういった人々は自分が亡くなった後の葬儀やお墓について準備をしていても、孤独死するなどすると生前の意思が活かせないという事態が生じることがあります。たとえば、終活ノートを記していてもその保管場所がわからなかったり、入ろうとしていたお墓があるのにその所在がわからないなどによって、本人の望まない方法で供養されてしまうことがあるのです。

実際、最近は多くの自治体で引き取り手のない遺骨の保管や供養は課題となっています。市町村の倉庫に遺骨が安置されている場合や、無縁仏として市営墓地の共同供養塔に合祀されるなどが行われていますが、その中には生前終活をしていたにも関わらず、それが死後うまく周囲に伝わらなかったいうようなケースも含まれていると思われます。

そこで、横須賀市では希望する市民が就活登録情報を市に登録することで、いざという時に本人が指定した人や、周囲に伝えられるような事業を始めたというわけです。

横須賀市の就活情報登録伝達事業(通称:わたしの終活登録)では、希望する市民であれば誰でも下記の情報を登録できます。

  1. 本人の氏名、本籍、住所、生年月日
  2. 緊急連絡先
  3. 支援事業所等
  4. かかりつけ医師やアレルギー等
  5. リビングウィルの保管場所・預け先
  6. エンディングノートの保管場所・預け先
  7. 臓器提供意思
  8. 葬儀や遺品整理の生前契約先
  9. 遺言書の保管場所と、その場所を開示する対象者の指定
  10. 墓の所在地
  11. 本人の自由登録事項

この制度は生前の開示にも対応しており、認知症や意識障害などによって本人が登録内容を伝えることができなくなったときには、医療機関、消防署、警察署、福祉事務所、および本人が指定した者からの照会に対して上記の9、10を除く情報を開示するものとしています。

また、死後は納骨、墓参希望の全ての第三者に登録情報を市が開示します。ただし、9の遺言書の保管場所については本人が指定した者に対してのみ開示されるものとなっています。

これによって、どのような形式で葬儀を行って欲しいのかや、準備したお墓、契約している葬儀社などの情報が伝わらず自分の意思に反する供養などが行われることがなくなります。最期まで自分の意思で全てを済ませたいと考えている人、身寄りのない人などにとっては、安心できる制度だといえるでしょう。

横須賀市では既に2015年7月から、一人暮らしで身寄りがなく生活にゆとりのない高齢市民を対象に、市が仲介して葬儀・納骨・死亡届出人・リビングウィル(延命治療意思)について専門家と相談できたり、葬儀社と生前契約できる「エンディングプラン・サポート事業」を実施してきました 2。これも、無縁遺骨が増加し市の予算によって火葬、無縁納骨堂への納骨などを行ってきたことが背景にあります。できるだけ本人の意思を尊重して供養をするという趣旨から行われたものです。ただ、所得の点などで対象とならない市民も多いことから、全市民が対象となるサービスが求められました。それが「私の終活登録」というわけです。

終活は個人的なことではありますが、亡くなった際の火葬や納骨などは行政サービスとは切り離せないものです。超高齢社会の中で、無縁仏が増加する一方の中、火葬や遺骨の保管、納骨などについて公費が投入されているということも見過ごせません。身寄りのいない高齢者や独居老人などが増えている中、個々人が自分の望む最期を迎えられるというのも大切なことでしょう。その意味では横須賀市の取り組みは注目すべきものであり、制度利用の推移を注視していくべきであろうと思います。