高まる合祀型墓所へのニーズ ~苫小牧市の共同墓説明会は盛況、初日申請も42人~

北海道苫小牧市では、多くの人々の遺骨を1つの墓に埋葬する「共同墓」への申請受付を2018年(平成30年)2月5日から開始しました。この共同墓は、遺骨を骨箱や骨壺から取り出し、他の人々との遺骨と一緒に納骨する形式の墓です。これまで苫小牧市では、市営の共同墓はありませんでしたが、市民ニーズが高いと判断し整備されたものです。

冬の苫小牧市の風景

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市民からの関心は非常に高く、事前説明会では2017年に行われた住民説明会にはのべ900人以上の住民が参加しています12。また、当初3,000体で予定していた納骨可能体数も、5,000体まで対応できるように変更されています3

共同墓は、高丘第二霊園内に宗教性を帯びない施設として整備され、納骨時の宗教的儀式や墓誌への刻名も行われません。費用は1体につき11,000 円(使用料7,000 円、管理料4,000 円)で申請時にのみ必要になります。非常に安価な納骨施設です4

申請受付初日の2月5日には、42件(遺骨61体)の申込があり、来場者も多数あったそうです。生前予約は受付していませんが、生前予約ができると勘違いした住民も多数足を運んでいたようで、住民ニーズの強さを感じさせます5。納骨は4月9日から行われますが受付は通年行われており、今後も利用者が多数申込みをすることが予想されています。

従来主流であった「一家に一基」という墓に関する考え方が大きく変わっていることを感じさせるニュースです。墓の承継者がいない人はもちろん、承継者がいても子供や孫に負担をかけたくないという切実な想いが共同墓の人気を押し上げていると思われます。一般に地方は都会より、高齢者は若年層より保守的な考え方をしがちだといわれますが、苫小牧市でこれだけのニーズがあるということからすれば、居住地域や年齢層を問わず、墓に対する意識が大きく変化していることを示唆しています。また、その背景には、墓の取得・維持・管理で生じる経済的負担の大きさもあるでしょう6

取得・管理・維持の負担が少ない納骨・葬送の方法へのニーズは今後も高まっていくことでしょう。人口減少社会に突入した日本では、「一家に一基」という価値観を維持すること自体が困難になっています。そういう意味では安価に納骨できる苫小牧市の共同墓整備は時代のニーズにあった行政サービスです。墓にかかわる社会的コストを抑え、一方でどのような人でも葬送についての心配がなくなる社会となっていくことは望ましいことでしょう。