散骨は合法か違法かについての整理(簡易版)
散骨を行うことは日本の法律に照らして合法なのでしょうか。それとも違法なのでしょうか。今回の記事では、この点について簡単に整理していきます。散骨に関する法律や条例に関する情報の詳細は別記事にまとめていますので、詳しくはそちらをご参照ください(散骨をする前におさえておくべき法律や条例の知識(2017.12最新 詳細版))。
≪目次≫
散骨について問題になる法律
散骨に関連する法律は、「刑法」および「墓地、埋葬等に関する法律」(墓埋法)の2つです。
刑法との関係 – 「葬送のための祭祀として節度をもって行えば違法ではない」
刑法190条は、遺骨を遺棄することを犯罪(遺骨遺棄罪)としています1。散骨は墓地でないところに遺骨を撒く行為なので遺骨遺棄罪にあたるのではないかというのが問題となります。
この点については、1991年に非公式ながら法務省刑事局が「葬送のための祭祀として節度をもって行えば違法ではない」との見解を出しました。
つまり、節度をもって行えば散骨は遺骨遺棄罪にはならないということです。
この見解はあくまでも非公式見解なので、国が散骨の合法性にお墨付きを与えたとまでは言えません。しかし、この見解が出された後に日本では散骨が活発に行われるようになりました。例えば、石原裕次郎さんの遺骨の散骨は当初合法性に疑義があるということで見送られていましたが、この見解が出されたことをうけて、遺骨の一部が相模湾に散骨されたという経緯があります。
墓埋法との関係 – 散骨は法の対象ではない
「墓地、埋葬等に関する法律」(墓埋法)2は、火葬や埋葬の方法などについて定めており、これに違反する行為は処罰の対象となります。ただ、墓埋法には散骨について定めた規定はありません。厚生労働省も、散骨は法律制定当初想定されていなかったとして、墓埋法が散骨を禁じているわけではないという趣旨の見解を示しています。
したがって、散骨は現在、墓埋法の規制の対象ではないということになります。
もっとも、厚生労働省の見解は非公式なもので、これもまた散骨の合法性に積極的に根拠を与えているとまではいえません。公衆衛生上の目的で制定されている墓埋法の趣旨からすれば、公衆衛生を害さない方法で散骨を行うことは最低限求められていることだといえるでしょう。
また、墓埋法は「埋葬」については規制していますので、散骨が「埋葬」にあたらないように行うことも大切です。「埋葬」を墓地以外で行うことは違法となってしまうからです。
法律違反にならない散骨の方法は?
上記を踏まえて、法律に違反しない合法的な散骨の方法を整理します。刑法に反しない「節度をもった」方法、そしてまた墓埋法に反しない「公衆衛生を害さない」方法であることが柱となります。
注意点 | 内容 |
1. 散骨する遺骨の形状について | 遺骨の1片が2ミリメートル以下になるまで粉砕(粉骨)すること。 |
2. 散骨場所の選び方について | ・承諾なく他人が権利を有する土地で散骨しない。 ・河川や湖沼など水源となる可能性のある場所で散骨しない。 ・住居・海水浴場・観光地・漁業権などに影響のない沖合で散骨すること。 |
3. 埋葬行為にあたらないようにする | 散骨した遺骨の上に土などをかけてはいけません。 墓地以外の場所で遺骨に土などをかけて埋葬することは違法。 |
4. 葬送の方法として行う | 葬送の目的をもって常識的な方法で行うこと。 |
5. 周囲の人々の感情への配慮 | 葬儀場として認知されていない場所である以上、服装や儀式などは周囲の人々に十分配慮する。 |
6. 自然環境への配慮 | ・自然にかえらない物は撒かないこと。 ・遺骨に含まれる六価クロムによる環境汚染に注意する。 |
7. 自治体の条例に注意を払う | 各自治体が行っている条例による独自の規制の存在に注意する。 |
これらを守っていれば、散骨が違法となることはありません。
なお、上記の7. にあるとおり、自治体によっては独自の規制を行っているところもあり、中には違反行為に罰則を設けているところもあります。散骨を実施する場所のある自治体には事前に確認をしておいた方がよいでしょう。別記事「散骨をする前におさえておくべき法律や条例の知識(2017.12最新 詳細版)」には、2017.12現在で判明している自治体の条例による規制についてまとめてありますのでご参照ください。
- 「刑法 第190条 死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、三年以下の懲役に処する。」刑法【電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ】 ↩
- 墓地、埋葬等に関する法律【電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ】 ↩
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