散骨を自分で行うために必要な準備や手続きはどんなもの?

ご遺骨を自分で散骨したいとき、行政に対して何か手続きは必要なのでしょうか。また、散骨を行う前にはどのような準備をしておくべきなのでしょうか。わかりにくい散骨の準備と手続きについて説明していきます。

散骨に必要な行政への手続とは?

原則として特別な手続きは不要

現在、日本には散骨を規制したり、そのやり方を決めた法律は存在しません。そのため原則として散骨を行う前に国や自治体に対して行うべき手続きは特にありません

ただし、一部の自治体では、個人・事業者を問わず自治体内で散骨を行うことを禁止しているところもあります。たとえば、北海道夕張郡長沼町や北海道岩見沢市、埼玉県秩父市などです。違反に対する罰則の有無や、市長が認めれば散骨できる場合があるかどうかなど、それぞれ違いがありますが、これらの自治体で散骨を行うことは原則として無理だといえます(参照:散骨をする前におさえておくべき法律や条例の知識(2017.12最新)- 散骨の条例による規制について)。

他にも独自の規制を行っている自治体はありますが、その多くは事業者に対する規制です。もっとも、条例制定の動きは少しずつ増えていっていますので、散骨場所を選定する際には事前に自治体に確認をするようにした方が良いでしょう。

自主的に法の趣旨やマナーに合致する方法を選ぶことは必要

散骨を直接規制する法律はありませんが、実際に散骨を行う場合には、「刑法」や「墓地、埋葬等に関する法律」(墓埋法)の趣旨に従い葬送としての「節度」を持ち、「公衆衛生」を害さないような方法、また「周囲の人々の感情」や「自然環境」にも十分配慮した方法を採ることが必要です。

そのために配慮すべきポイントを列記すると下記のようになります。


  1. 遺骨は1片が2ミリメートル以下になるまで粉砕すること。
  2. 承諾なく他人が権利を有する土地で散骨しない。
  3. 河川や湖沼など水源となる可能性のある場所で散骨しない。
  4. 住居・海水浴場・観光地・漁業権などに影響のない沖合で散骨すること。
  5. 墓地以外の場所では遺骨に土などをかけず地表に撒くだけにする。
  6. 葬送の目的をもって常識的な方法で行うこと。
  7. 喪服の着用は避け、お経や線香などをあげない。
  8. 自然にかえらない物は撒かないこと。
  9. 遺骨に含まれる六価クロムによる環境汚染を防ぐ。
  10. 自治体の条例で独自規制がないか確認する。

上記のマナーのうち「9. 遺骨に含まれる六価クロムによる環境汚染を防ぐ」という部分は、個人ではなかなか難しいでしょう。水源になるような場所を避ける、近隣の土地から十分離れた場所を選ぶ、漁業や観光に影響にある場所を避けるなどの点に留意すれば、個人が小規模に散骨を行う際は大きな問題にはならないだろうと思います(事業者として散骨を行う場合には配慮が必要な点ではあります。また弊社の行う粉骨サービスでは六価クロム検出時の無害化処理を標準で行っています。)。

これらについてはこちらに詳しく解説しています。(参照:散骨をする前におさえておくべき法律や条例の知識(2017.12最新) – 葬送としての節度をもち公衆衛生を害さない散骨の方法とは

散骨を行う前にするべき具体的な準備とは?

上記のとおり、散骨を行う際に行政機関に対して行うべき手続きは特にありませんが、実際に散骨を行う場合にはいくつかの準備が必要です。

埋葬許可証を準備する

散骨を行うことは「埋葬」ではありませんので、埋葬許可証が必須なわけではありません。もっとも、散骨場所に赴く場合にはご遺骨を持ち運ぶことになりますので、そのご遺骨がどなたのもので、ご自分とどのような関係なのかを示す書類を携行しておく方が安心です。埋葬許可証があれば、何かのときに所持品の中にご遺骨が含まれていることについて簡単に説明することができます。

埋葬許可証というのは、火葬場で火葬する際に必要となる火葬許可証に火葬場の印が押されたもののことを指します。通常は骨壺と骨箱の間に入っています。なお、散骨代行業者などに依頼する場合にも埋葬許可証のコピーの提出が必要となることがほとんどです。火葬場で火葬をすれば埋葬許可証は得られるので、特に意識する必要はありませんが、失くさないようにしっかりと保管しておくようにしましょう。

なお、既にお墓に納骨されているご遺骨を他のお墓や永代供養塔などに移す場合には改葬許可証が必要となります。なお、日本では散骨について法整備がされていませんので、厳密には散骨は「改葬」にはあたりません。ただ、お墓に埋葬されている遺骨を取り出すには市町村長の許可が必要とされていますので、改葬申請書を提出して改葬許可証を得る必要があります。その際は、改葬場所などの記載に関しては「自宅供養」などとしておけば良いでしょう。ただし、自治体によって取り扱いが異なるため、念のため事前に問合せをした方が無難です。

散骨場所を選定する

散骨を行う場所については、ある程度慎重に選定することが必要です。他人の土地や他人の権利が存在する土地に散骨することはできませんし、河川や湖沼などの水源となるような場所でも散骨を行うべきではありません。また、海で行う場合でも、漁業権や観光資源への配慮が必要です。また、自分の土地であっても周囲の住民の方への配慮なども必要です。散骨場所選定の仕方については、こちらに詳しく解説しています(散骨をする前におさえておくべき法律や条例の知識(2017.12最新) – 散骨の注意点2 – 散骨場所の選び方)。

また、条例によって規制されている場所でないかどうか、散骨場所のある自治体に事前に問い合わせておくと安心です。

粉骨をする

焼骨をそのまま散骨してしまうと、散骨の様子を見ていた人、後日散骨された焼骨を発見した人が、遺骨の遺棄と勘違いしてしまう可能性があります。場合によっては、適切に埋葬されていない遺骨を発見したとして通報されて事件化してしまう可能性も否定できません。

そこで、一見してご遺骨だとわからない程度まで粉砕してから散骨することが必要です。粉砕の程度について特に決まりがあるわけではありませんが、遺骨の一片が2ミリメートル以下になるように粉骨するようにすれば後々問題になることはありません。

粉骨はご自分で行うことも可能です。ただ、故人との関係や想いによっては精神的に辛い作業になることもあります(逆に自ら粉骨することが穏やかな気持ちにつながる方もおられます)。また高齢の方には粉骨作業は体力的に大変な面もあるでしょう。そのため、粉骨作業は専門業者に依頼することも多くなっています(弊社も安価な粉骨サービスをご提供しています。参照:粉骨サービス内容・料金・ご利用方法)。

ご遺骨を運ぶ方法

通常、散骨場所までご遺骨を身につけて運ぶことが多いと思います。ただ、墓じまいのために多くのご遺骨を散骨するような場合には、ご遺骨を運送業者に運んでもらいたいこともあるでしょう。

その場合は、日本郵便のゆうパックを利用することになります。他の運送業者の多くは運送約款上ご遺骨の荷受けを拒否できるとしているからです。ゆうパックであれば、品名として「遺骨」と記載して送ることができます。

個人で散骨を行うことはそう難しいことではない

ある程度の下調べとある程度の準備を行えば、個人で散骨を行うこともそう難しいことではありません。ただ、葬送の方法として節度をもって行うことが大切です。条例の規制がないかどうかを確認し、マナーを守って散骨を行うようにしましょう。

葬儀の一形態として、クルーザーなどを貸し切り、数十万のお金をかけて散骨を行うことも可能です。この場合は、依頼する業者がさまざまな手配を行ってくれます。また、ご自身で立会わず散骨代行業者に依頼する方法もあります。散骨代行業者の多くは、法の趣旨に従いマナーも守って散骨を行っていることがほとんどですが、これらの点についてきちんとした対応をしているかどうかは依頼前にホームページなどで確認しておくと良いでしょう(弊社でも安価な散骨代行サービスを行っています。参照:海洋散骨代行サービス内容・料金・ご利用方法)。