お墓がない場合に遺骨をどうする?供養方法のまとめ

ご遺骨の供養方法として現在最も一般的な方法は、お墓に納骨・埋葬するというものです。しかし、ご遺骨を納骨すべきお墓がないという人もいらっしゃるでしょう。実際、いくつかの自治体が行ったアンケート調査では、お墓を持っていないという人も多数いらっしゃいます1 2 3 4 5 6

グラフ - お墓を既に持っているかどうか

そこで、お墓がないという方が選ぶことのできるご遺骨の供養方法を挙げてみましょう。

本当に納骨できるお墓がないのかどうか確認する

まず、本当に納骨できるお墓がないのかどうかを確認しましょう。

お墓は民法上の「祭祀財産」として相続されていくものとされています7。したがって、お墓は誰か(多くの場合長男)が承継することになるのですが、それ以外の人がお墓を使えないわけではありません。時々「お墓は長男が受け継いだので自分にはお墓がない」と思い込んでいる方がいらっしゃいますが、通常はそんなことはありません。墓地や霊園では納骨できる親族の範囲が定められており、その範囲に入っていることもあるのです。

たとえば、多くの公営・民営の墓地・霊園では「使用者の親族(6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族)」の方のご遺骨は納骨できることとなっています。たとえば、使用者と「またいとこ」であれば6親等の血族ですし、「ひ孫の配偶者」や「甥姪の配偶者」であれば3親等の姻族にあたりますから、その範囲は相当広いものです。ただ、寺院などのお墓については納骨できる範囲がより狭くなっている場合もあります。これらの範囲は、墓地や霊園の規則で定められていますので確認してみましょう。

お墓を購入する

経済的に余裕があるなら、自らお墓を購入するという方法ももちろんあります。お墓の購入に必要な費用は地域や墓地・霊園によって大きく異なりますが、永代使用料や墓石の購入等の取得費用で概ね100万円から300万円程度かかります。これに加えて、年間の管理料として5千円から2万円程度が必要です。

なお、「墓の購入」が意味することは、その墓地の土地所有権を取得することではないという点には注意が必要です。墓地購入の際には「永代使用料」を支払うので、文字通り「永代」にわたって墓地を使い続ける権利を手にしたと勘違いする人も多く、半ば所有権を手にしたと考えてしまう場合も少なくありません。しかし、「永代使用料」は「使用料」に過ぎず「借り続けることへの対価」という意味しかありません。そのため、墓地・霊園の管理規則に管理料の支払いを一定期間以上怠ると使用権を失うと定められています。

したがって、お墓を購入する際には、自分の代だけでなく子や孫にお墓を承継してもらった後も、お墓の維持管理を期待できるのかどうかを真剣に考えておく必要があります。お墓の維持管理をする人がいなくなったり、承継者が維持管理の負担に耐えられなかったりすれば、容易に無縁仏になってしまうからです(参照:永代使用料を払ったのに無縁仏?少子高齢・多死社会の厳しい現実)。

共同墓などへの納骨

個人で墓を購入するよりも費用を抑えられ、無縁仏になってしまう心配もない方法として、共同墓に納骨するという方法があります。

共同墓というのは、親族関係のない人たちの遺骨をひとつの場所に合祀するお墓のことです。このようなお墓は近年人気を集めており、公営・民営を問わず多くの墓地・霊園で新設が相次いでいます(参照:高まる合祀型墓所へのニーズ ~苫小牧市の共同墓説明会は盛況、初日申請も42人~)。

共同墓にもさまざまなバリエーションがあり、納骨後一定期間(20年間程度)は個別に安置されその後他の遺骨とともに合祀されるタイプ、納骨時から合祀されるタイプがあります。また、市民であれば誰でも同じお墓に入る共同墓以外に、特定の関係のあった人々(友人同士など)が一緒に納骨される共同墓もあります。後者は納骨できる人の範囲を変えた個人のお墓のバリエーションの一つといえるかもしれません。

無縁墓(無縁仏)の増加に頭を悩ます墓地・霊園側と、安価で安心できる納骨場所を求める一般市民とのニーズが合致した共同墓は今後も増加していくことが予想されます。近くの自治体や霊園でこのようなお墓がないか確認してみるとよいでしょう。

手元供養する

遺骨はお墓に納骨「しなければ」ならないと思っている人も多いのですが、遺骨を手元に置いて供養することは、法律上特に問題があるわけではありません。法律は遺骨を遺棄することや定められた方法以外で埋葬することを禁じているだけだからです。

一方、宗教的な意味については信仰の内容によって異なるとは思いますが、遺体を火葬した後に一定期間後納骨する(たとえば四十九日など)というやり方に古い歴史があるわけではありません。資料によれば、日本で火葬が普及したのは昭和に入ってから以降で8そこから最近まで時間をかけて火葬率が上がってきたのですから、現在の遺骨供養の常識が伝統的な宗教儀式として尊重されるべきだとは言えないと思います。

自宅に骨箱・骨壺を置いて供養している人も実際には多くいらっしゃいます。このような人の中には、「お墓に納骨する」という「常識」に反すると考えて、手元供養していることが心の負担になっている人もいらっしゃいますが、そのように考える必要はありません。焼骨を粉砕(粉骨)してかさを減らすこともできますし、飾るのに適した小さな骨壺やペンダントに遺骨をいれる方法も広がってきました。

ご遺骨と離れがたいということもあるでしょう。そのような場合は手元にご遺骨を置いておいても良いのです。

散骨する

お墓に納骨するという方法以外に、山や海に散骨するという方法もあります。

その場合には、遺骨を細かく粉砕して行うこと、他の人の権利を侵害したり迷惑をかけないように散骨場所を慎重に選ぶこと、条例の規制がないかなど、注意すべき点をよく確認しておきましょう。散骨をする場合の留意点については別記事で詳細に解説していますので、関心がある方はご覧ください(参照:散骨の基礎知識)。

散骨は特定の場所をお墓とするのではなく、ご遺骨を自然に還すことで広い自然全体を供養場所と考える方法です。故人の遺志が明確な場合は別として、ご遺族で散骨を決める場合には、このような葬送方法の理解が進むように親族間でよく話し合っておくことが必要です。

多様な供養方法が認められる時代になってきた

以上見てきたように、ご遺骨の供養方法は以前に比べて多様な方法を選べるようになってきました。どのような葬送方法を選ぶのかは、他の人の迷惑にならない限り、個人の自由に委ねられるべき問題でしょう。家族のあり方が変わり、宗教観や死生観なども変遷してきた現在、選択肢が多数あることは良いことだと思います。

 


  1. さいたま市墓地に関する市民意識調査報告書 平成27年3月 さいたま市 保健福祉局【さいたま市】 
  2. 平成27年度第6回インターネット都政モニター「東京都の霊園」アンケート結果【東京都公式ホームページ】 
  3. 横浜市墓地に関する市民アンケート調査報告書 平成25年3月 横浜市健康福祉局【横浜市】 
  4. 墓地などに関する意識調査について(健康福祉局八事霊園・斎場管理事務所)- 平成27年度第3回市政アンケート【名古屋市公式ウェブサイト】 
  5. 市政モニターアンケート「墓地に関する意識調査について」(平成28年8月実施)の結果-1【大阪市】 
  6. 福岡市墓地・納骨堂に関する市民アンケート調査 – 平成27年度 福岡市における墓地・納骨堂の需給状況について(アンケート調査結果)【福岡市 ホームページ】 
  7. (祭祀に関する権利の承継)
    民法第897条
    1 系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者がこれを承継する。但し、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が、これを承継する。
    2 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、前項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所がこれを定める。 
  8.  勝田至 編『日本葬制史』(吉川弘文館)P293~ によれば、日本では明治時代以降に火葬が普及しはじめ、大正14年(1925年)の火葬率はまだ43.2%に過ぎなかったとされています。