自治体は合葬墓の整備を推進すべき

最近、各地方自治体の公営墓地で合葬墓の整備が行われ人気を得ているという話題を目にすることが多くなりました。

最近では、弘前市の整備した合葬墓への生前受付倍率が2.5倍だったとニュースになっています。

青森県弘前市が、多くの人の焼骨を一つの墓に埋葬する「合葬墓」の生前受け付けを始めたところ、応募者が今年度の募集枠20人を上回る52人に達した。少子高齢化などの影響で、自分が入る墓がないなどの悩みを抱える人が増えているためとみられる。

「合葬墓」生前申し込み 応募多数、倍率2.5倍に 弘前  – 毎日新聞

合葬墓とは、遺骨を個人・家族単位ではなく、他の家族(他人)の遺骨とともに同じ場所に納骨する墓のことです。遺骨を骨壺に入れた状態で納骨する形式のものと、骨壺から取り出し他の方の遺骨とともに同じ場所に埋葬する場合もあります。似たようなものに「永代供養墓」がありますが、この名称は仏教的意味合いを含んでいますので、地方自治体が整備するものは合葬墓と呼ばれることが多くなっています。

上記の記事では、1人暮らしのご老人がご自身の入る墓として選ばれている例が挙げられておりました。ご自身の入る墓についての不安を永代使用料の6万円だけで解消できるのはとても安価だといえるでしょう。新たにお墓を取得するためには一般的に100万円〜300万円程度かかると言われていますので(参照: お墓は必要?墓地に関する意識 ~主要自治体での調査を参考に~ )、それに比べれば非常にリーズナブルな方法だといえます。

自分が亡くなった後のことや、個人の供養に関する考え方は個々人によって異なりますので、一概にどのような方法が良いとは言うことはできません。ただ、お墓があってもそれを承継する人がいなかったり、承継する人にとって墓の維持管理が大きな負担になる場合もあります。万一お墓の管理を放棄してしまうと、そこに入っているご遺骨はいわゆる「無縁仏」になります。無縁墓や無縁仏の扱いについては自治体によって微妙に異なりますが、多くの場合、無縁仏用の合葬墓に改葬されることになります(参照:永代使用料を払ったのに無縁仏?少子高齢・多死社会の厳しい現実 )。その対応は自治体が行いますので、費用には税金が投入されることになります。また、無縁遺骨が大幅に増加しているという報道もあります(参照: 無縁遺骨は10年で倍増。背景には貧困や家族観の変化 )。

平和公園無縁塚の写真

写真は名古屋市平和公園の無縁塚です

高度に少子高齢化が進む社会において、1人、または1つの家について1つのお墓を維持していくことが困難になっている現実があります。「家」というものに対する価値観はさまざまあるでしょうが、家ごとに石造りのお墓に納骨するというあり方は、江戸時代の宗教統制政策として行われた檀家制度の影響に過ぎません。亡くなった後のこと、供養の仕方などに対する考え方もアップデートしていくべき時期にきていると思います。

承継者がいない、経済的にお墓を取得・維持する余裕がないなどの不安を抱えている方は多数いらっしゃいます。そのような方々が安心することのできる施設を自治体が整備していくことは、住民のニーズに応える良い施策だと思います。各自治体が合葬墓をもっと整備していくことを個人的には望みます。

また、最近は散骨をされる方も多くいらっしゃいます。弊社にも散骨準備として粉骨をご依頼くださる方が多数おられます。これもまた個人の考え方ですが、古い歴史をたどれば日本でも散骨は決して珍しいものではなく(参照: 散骨の歴史 ~かつて日本では散骨は珍しくなかった~ )、葬送の1つのあり方としてもっと認知度が上がっても良いのではないかと思います。